2022-08-19

【政界】元首相の死で権力構造が変化 問われる岸田首相のリーダーシップ

イラスト・山田紳



距離を置く経産相

 岸田内閣の閣僚は現在、安倍派と茂木派が4人ずつで並んでいる。安倍派には「最大派閥として6人は欲しい」という期待があったが、安倍の死で不透明になってきた。

 その中で、経済産業相の萩生田は留任との見方が強まっている。冬の電力需給ひっ迫に備え、エネルギー政策が岸田政権の喫緊の課題に浮上したからだ。

 火力発電所の運転再開などによって今夏は電力の安定供給にめどが立った。それを踏まえ、岸田は7月14日の記者会見で「経産相に対し、この冬で言えば最大9基の原発の稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保するよう指示した」と表明した。

 9基とは、関西電力の大飯3・4号機、高浜3・4号機、美浜3号機、四国電力の伊方3号機、九州電力の川内1・2号機、玄海3号機を指すとみられる。これらはすでに再稼働しているが、原子炉等規制法に基づき13カ月に1回、定期検査のために原子炉を止める必要がある。運転再開や検査入りのタイミングを調整して今冬に9基態勢を整えるのが、首相発言の真意のようだ。原発を新たに再稼働させるわけではない。

 岸田の指示の翌日、萩生田は会見で「原発の工事や検査期間の見直しなどにより、最大9基の稼働を確保する」と述べた。同じ日、電気事業連合会会長の池辺和弘も「原発を持っている会社にとっては、きちんと冬に運転できるように工事や検査に取り組みなさいという激励、叱咤だと思う」との見解を示した。

 ただ、9基はいずれも西日本に集中しており、東日本の供給不安がこれで払拭されるわけではない。政府としては知恵の出しどころだ。

 閣内にいる萩生田と官房長官の松野は、今回の安倍派の「跡目争い」に直接絡んでいない。松野にも留任説があり、岸田がこの2人をどう処遇するかは安倍派の今後に大きく影響する。

 自民党側では副総裁の麻生太郎と幹事長の茂木敏充の留任が濃厚だ。安倍派の動揺に乗じて茂木、麻生、岸田3派が連携すれば、岸田の政権運営は当面、安泰と言える。前首相の菅は、参院選後を目指していた無派閥議員による勉強会の発足を「こういう状況になったから、そこはいろいろ考えるところがある」と見送った。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事