2022-07-20

【政界】参院選後、岸田首相に問われる『覚悟』と『決断』

イラスト・山田紳



経済の好循環へ重要局面

 一方、今回の参院選で、3カ月前の発言にはなかった「大きな課題」が急浮上し、争点となった。

 「有事の価格高騰」(岸田)で、経験したことのないような物価高が国民の懐を直撃している。

 岸田は日本では特にエネルギーと食料品の価格高騰が大きいとして、「この2つにピンポイントをあてて万全の対策をとる」と主張する。具体的には、自治体が地域の実情に合わせて使える1兆円の緊急対策を実施したことや、5.5兆円の予備費を用意していることを挙げた。

 さらに、「物価上昇は米国など他の主要国と比べて4分の1程度にとどまっている」などと、これまでの対策の成果をアピールしてきた。

 これに対し、野党側は参院選で、国民の負担軽減のため「消費税減税」「消費税ゼロ」を掲げ、「急激な円安、物価高の局面においては、極めて有効な消費喚起策だ」(立憲民主党代表、泉健太)などと主張。ガソリン価格の抑制や給付金なども訴えた。

 ただ、与党は「社会保障の財源確保が消費税率引き上げの理由だった。また借金に逆戻りさせるのは無責任だ」と野党側を批判し、消費税減税を否定する。今後は、大型の経済対策や2022年度第2次補正予算案編成を求める声が強まることになりそうだ。

 しかも、厚生労働相の諮問機関「中央最低賃金審議会」が2022年度の最低賃金引上げの「目安」の議論をスタートさせた。物価高騰が国民生活に重くのしかかる中で、賃金が上がらなければ生活は一層苦しくなり、逆に持続的に賃金が上がれば消費拡大につながる「好循環」を実現できる。

 審議会は7月下旬に議論を取りまとめる予定で、岸田政権にとって、すぐに重要な局面を迎えることになる。

 2021年度の最低賃金は全国加重平均で時給930円。政府の意向を反映し、過去最大となる全国一律28円増で決着した。政府は今回、時給1000円を目指しているが、野党側は軒並み「1500円への引き上げ」を訴えており、今後、攻勢を強めそうだ。

 だが、企業側には警戒感が強い。新型コロナの影響を受けた飲食業や小売業などは経営体力が落ち、最低賃金の水準が重荷になっている。原材料や肥料や燃料の高騰分の商品価格への転嫁を進めれば、国民の懐を痛めることにつながる。大幅な引き上げに慎重にならざるをえない。岸田は「(賃上げは)コスト増ではなく、人的資本への投資だ」と理解を求めてきたが、議論は激しくなりそうだ。

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