2022-02-04

【障害を価値に変える】ミライロ・垣内俊哉社長が考える「車椅子に乗っているからこそできること」とは?

垣内俊哉・ミライロ社長



先人との「縁」を次につないで


 ─ ところで、垣内さんは弊社が開催している「財界賞経営者賞」で令和3年度の経営者賞を受賞されました。その選考委員としても長年お世話になった、作家の故・堺屋太一さんともご縁があったとか。

 垣内 そうなんです。学生時代からお世話になっていました。経営者が集まる「堺屋塾」にも呼んでいただき、受付など運営のお手伝いをさせていただくこともありました。堺屋先生には「日本の未来のために頑張りなさい」といつも激励していただいていました。

 ─ 堺屋さんの思い出は何かありますか。

 垣内 堺屋先生は大阪万博を手がけられた方ですが、先程お話したように、万博以降に日本のバリアフリーが進んだことを意識しておられ、2025年の大阪万博で、改めて日本のバリアフリーを世界に発信していこうと話されていました。

 堺屋先生は残念ながら、それをご自身の目でご覧になることは叶わないわけですが、それは実現に近づいています。

 ─ 関係者に意志はつながっていると。

 垣内 ええ。先生が描いていたものを必ずつなげていきたいですし、25 年までのあと4年間で、私も役割をしっかり果たしていきたいと思います。

 実は「財界賞経営者賞」では他にも様々なご縁をいただいています。

 堺屋先生にお呼びいただいて式典にも参加させていただいたのですが、その時に西武ホールディングス社長の後藤高志さん、住友林業会長(現・最高顧問)の矢野龍さんにご挨拶させていただいたことがきっかけで、両社から弊社に出資いただくことになったのです。

障害者手帳を電子化した「ミライロID」


 ─ 障害者手帳を電子化したアプリ「ミライロID」という事業も手掛けていますね。この狙いは?

 垣内 障害者手帳は、障害者の身分証なのですが、国ではなく各自治体が発行しており、フォーマットが283種類もあります。性善説に立てば、ありえないことではあるのですが、規格にバラつきがあることで不正利用も多発しています。

 この統一を国土交通省、厚生労働省、総務省の皆さんにお伝えし続けてきました。

 ─ 実際、どのように変わったんですか。

 垣内 障害者手帳は1949年からあるのですが、70年間変わっていなかったルールを変えていただき、我々のアプリが認められるようになりました。

 ただ、リリースをしたものの、導入いただけた企業は19年時点で6社でした。多かった声は「1民間企業の身分証アプリを認めるわけにはいかない」というものです。

 しかし、地道な交渉により少しずつ導入事業者は増え、2020年6月にはマイナポータルとの連携が実現しました。

 これを機に政府から事業者に向け、ミライロIDの導入推奨の通知が発出されたこともあり、鉄道会社では160社以上に、国内では3000以上の事業者にご参画いただくアプリとなりました。

 ─ ビジネスとして成り立たせるということは一つのキーワードになっていますね。

 垣内 そうですね。慈善事業としてやっているわけではないということです。バリアフリーを進めるのであれば、取り組む事業者が何らかのメリットを享受しなければいけません。ボランティアだけでは、企業にとっては負担でしかありません。

 あくまでもビジネスとして取り組んだ結果、売り上げが上がり、コストが減ったという形にならなければ、企業にとって持続的な活動になり得ません。

 関係する方々には「しっかりと一緒に儲けていきましょう」と伝え続けていきたいですし、そのことを通じて弊社も、社会的役割、使命を果たしていきたいと考えています。 (続く)

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