2022-01-31

≪終身雇用・年功序列に終止符≫ なぜ、日立は『ジョブ型雇用』を導入するのか?

コロナ禍で在宅勤務などが増加する中、企業も、個人も新たな働き方の模索が続いている

“就社”か、“就職”か



 日立製作所が本体の全社員を対象に、働き手が専門性を発揮できるよう職務内容を明確に定める「ジョブ型雇用」を導入する。欧米では一般的なジョブ型雇用への移行で、日本の雇用形態を見直す契機となるか――。

 「ジョブ型」というのは、会社ありきではなく、まず仕事(ジョブ)ありきの制度。仕事に社員を割り当て、働く側もその仕事の専門家であることを意識して仕事を行う。職務を細分化して明確にし、その上で給料などの待遇が決まっていく。

 一方、これまで一般的な日本企業が行ってきたのは「メンバーシップ型」と呼ばれ、まず会社があって、仕事を会社が社員に割り当てていく。いわゆる総合職のようなもので、会社の意向に沿って、時に転勤もあれば、様々な職務を遂行することが求められる。

 イメージとしては、メンバーシップ型が“就社”、ジョブ型が“就職”と言ったところか。

 ただ、メンバーシップ型とジョブ型にはそれぞれメリットもデメリットもある。メンバーシップ型では多様な仕事が求められる分、専門性が低くなりがちだし、ジョブ型では職務のレベルが上がらない限り、どんなに長年働いても昇給も昇進もできない。そうした厳しい現実があることも事実だ。

 日立ではこの10年ほどの間に、全世界の人材(同社では人財という)情報を把握し、役割や仕事の基準を明確化するための人事制度や人事プラットフォームを構築してきた。すでに管理職にはジョブ型を導入。今後は本体の社員約3万人にもジョブ型制度を適用し、順次、国内の関連会社にも適用できるかを判断していく考え。

 日立の改革に関して、日本共創プラットフォーム社長の冨山和彦氏は「日本でいう終身年功制とセットになったメンバーシップ型雇用みたいなものは、まともな先進国にはそもそもない。あれが成り立ったのは、産業的には加工貿易型の工業化モデルで右肩上がりの成長期と若い人が多い人口増期という組み合わせがあったからで、それが崩れたらそもそも成り立たない」と指摘する。

 その上で、冨山氏は「製造業は活動のグローバル化を進めているので、大半の社員は日本型メンバーシップで働いてはいないし、情報化モデルの到来で事業の寿命は短くなり、組織能力の入れ替えスピードが速くなると終身年功モデルは競争力を失い、人口構成が逆ピラミッドでは上司2人に部下1人となって成り立たない。だから未だにそれが残っていることが異様で、日立がやっていることは時代の趨勢の中でおくればせながら当たり前のことをやっているだけ」と受け止めているようだ。


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