2021-12-24

【政界】安定政権の確立に向けた参院選 岸田政権にとっての鍵は対中外交

イラスト・山田紳



対中外交が焦点に

 中国政府は直ちに「強烈な不満と断固とした反対」(外務省副報道局長の趙立堅)を表明し、対抗措置を取ると明言した。

 独裁体制を盤石にしつつある国家主席の習近平にとって、世界の注目が集まる北京五輪は国家と自らの威信をかけた一大プロジェクトだ。是が非でも成功させなければならないイベントであり、中国は28年の米ロサンゼルス夏季五輪への外交ボイコットもちらつかせる。

 経済や軍事面で激化している米中の対立が、スポーツの祭典にも影響した格好で、12月8日には、米国に続いてオーストラリアや英国なども外交ボイコットを表明し、同様の動きはさらに広がる気配を見せている。

 岸田は7日、記者団に「国益の観点から自ら判断していきたい」と述べるにとどめた。岸田政権は新たに国際人権問題担当の首相補佐官を設けた。一連の経済安全保障策も、もとはといえば中国などに依存しがちなサプライチェーン(供給網)の在り方を見直し、日本が同盟国などと連携して自立した経済を確立していく狙いがある。

 ましてや同盟国・米国と反対の行動を北京五輪に際してとるとは考えにくいが、岸田はなお慎重だ。

 はっきりしない対応の理由として、一部には岸田が「親中派」だからだと批判する向きもある。こうした指摘に対し、岸田自身は周辺に「決して親中派ではない」と否定する。

 岸田率いる宏池会(岸田派)の会長を務めた元首相の大平正芳は、盟友の田中角栄が首相として1972年に成し遂げた日中国交正常化当時の外相だった。加藤紘一や古賀誠ら宏池会の歴代幹部は確かに「親中派」が目立つ。

 第2次岸田政権で外相に起用された宏池会所属の林芳正も、就任前まで超党派の日中友好議員連盟会長を務めていた「親中派」と位置付けられる。

 だが、岸田がよく持ち出すエピソードとして、安倍政権の下で約4年8カ月務めた外相時代、中国国務委員兼外相の王毅に何度も面会を断られたとの話がある。軍拡や人権問題について抗議する岸田を嫌ったためだとされ、岸田は周辺に「何度言っても会ってくれない。こちらが厳しいことを言うことが分かっているからだ」とこぼしていた。

 今度はトップとして毅然とした対応がとれるかどうかが試されている。 (敬称略)

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