2021-10-25

【政界】「新しい資本主義」に向けた具体策とは?岸田首相の真価問われる衆院選

イラスト・山田紳



伸び悩む野党

 野党に目を転じると、総裁選から岸田内閣発足に至るまでの間の立憲民主党をはじめとする野党の低迷ぶりは、自民党への「追い風」となりつつある。

 立民代表の枝野幸男は総裁選期間中、衆院選に向けた政策を相次いで発表したが、中身は政府与党がすでに提案、実行しているものか、実現の可能性が低い奇策が目立つ。

 9月に発表した第1弾では、政権を獲得した後の初閣議で実行する7項目を列挙した。筆頭項目に掲げた新型コロナ対策の補正予算編成はすでに岸田も言及している。コロナ対策の司令塔設置もそうだ。

 森友問題のいわゆる「赤木ファイル」関連文書の開示、森友・加計・桜を見る会の問題の真相を解明するチームの設置などを並べたが、政権の最優先項目として多くの国民が称賛するかどうかは疑わしい。

 選択的夫婦別姓の早期実現、同性婚の法整備といった万人が受け入れるとはいいがたい政策や、所得1千万円程度以下の所得税実質免除、時限的な消費税率の5%への引き下げなども掲げた。所得配分を手厚くするための政策だが、配分のための具体的な財源の試算はない。

 沖縄県にある米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設「中止」に至っては、枝野ら現在の立民幹部が中枢を担っていた旧民主党政権でいったん移設を決定した案件だ。自然エネルギーの割合を「2050年に100%」にする目標も工程は示されず、公約違反を続けた旧民主党政権を彷彿させる。

 衆院選対策としては共産党との「限定的な閣外協力」に合意した。衆院選の選挙区で候補者の一本化は推進するが、連立政権は組まないとの内容だ。共産党は党綱領で日米安全保障条約の廃棄や自衛隊解消を明記している。

 一方で立民は外交・安全保障の基軸は日米同盟としており、自衛隊の存在を認める立場だ。その立民が、「閣外」とはいえ共産との政権樹立に向け協力することは今までになかったことだ。

 岸田は30~31日にイタリア・ローマで行われる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)への出席を見送った。久々に対面式で行われ、外相を長く務めた岸田の外交デビューとなる舞台を捨ててまで早期解散を決断した。新内閣発足の勢いそのままに決戦に臨む覚悟を示した形だ。

「いい人」を捨てて闘争心をむき出しにする岸田が運をつかみ続けられるかどうか、あるいは首相交代が頻繁に行われる時代が再び来るのか。衆院選の動向に目が離せない。 (敬称略)

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事