日本は何を学んで、進化してゆくのか
―― 岸田新政権発足にあたっての感想と期待することを聞かせてもらえませんか。
金丸 岸田総理は、新しい日本型の資本主義をつくるとおっしゃっています。そして、小泉政権以降の新自由主義的政策を転換するともおっしゃっています。今はこうした言葉や基本方針からイメージしているだけなので、具体的に何をしようとされているのかを、これから見ていきたいと思っています。
振り返ると、この2年弱の間に、世界はコロナ禍で経験したことを踏まえて学習し、進化しています。一方、日本はコロナに振り回された中で、いったい何を学んだのか。本来なら、備えあれば憂いなしであるべきでしたが、実態は感染症に対する備えがなかったに等しい。
それに新自由主義からの脱却と言っても、何かの主義同士が対立、対決していたわけではありません。言い換えると、経済合理性をあまりにも追求しすぎたことで、安くていいものを日本ではつくれなくなり、中国への依存度が高まってしまった。
その結果、パンデミックによる危機が訪れた時に戦略的な物資の調達もままならず、世界中のサプライチェーン(供給網)を見直すことになったのです。
岸田政権は今回目玉として、新たに経済安全保障担当相を設け、担当大臣に小林鷹之さんという40代後半の若手の方を任命しました。小林大臣を岸田総理がどうサポートし、リーダーシップを発揮していくのか。どのような政策を実行していくかによって、われわれ日本は何を学び、進化したのかが明らかになるのではないでしょうか。
―― これはまさにコロナ禍での危機管理ができていなかった。そして、危機に突入した後の司令塔不在という反省があってのことを踏まえての新ポストの創設ということですね。
金丸 そうあってほしいです。コロナ危機において、菅前首相はいろいろな局面で剛腕をふるおうとされましたし、リーダーシップを発揮しようとする様を国民が日々見聞きしてきました。
しかし、リーダーシップを発揮しようにも、医療関連の法制度や現行法の様々な壁があって、今がまさに危機なのに、総理が法律を無視するわけにもいかず、実行できないという問題が現実としてありました。正直なところ、法律違反でしかリーダーシップを発揮できないような仕組みとは、いったい何だろうと思いましたね。
わたしも近くで見ていましたが、菅前首相はそういう壁にぶち当たりながら、相当苦労されていたと思います。