2021-08-15

【東急】地下鉄の線路上部に歩行者デッキが誕生 進む「渋谷大改造計画」

地下鉄銀座線渋谷駅の上部に完成した「渋谷ヒカリエ ヒカリエデッキ」(提供:東急)



「横」と「縦」の動線を整備

 東急首脳はヒカリエデッキの整備を受けて、「(スカイウェイができれば)シニアの方も子連れの方もスムーズな移動ができる画期的な動線になる」と語る。渋谷には10代や20代の〝若者の街〟というイメージが根付いており、OLやシニア世代をいかに惹きつけるかが課題だった。

 もともと狭い土地にビル群が林立しているのが渋谷。そのため、自分がどこにいるのか分からず、東西南北へのスムーズな移動も難しい。「上下左右の移動を繰り返しながら目的地に到達する渋谷はダンジョン(迷宮)のようだ」と語る経営者もいる。

 そもそも渋谷駅はその特有の谷地形がもたらす様々な課題に悩まされてきた。駅に焦点を当てれば、6駅8線という各路線の改札が地下3階から地上3階へと点在し、他路線への乗り換えにも複雑な移動が伴う。また、駅施設自体の老朽化もある。大正時代から増改築が繰り返され、耐震性やバリアフリー化などの向上が必要になっている。

 さらに、駅周辺に目を向ければ首都高・国道246号線による南北分断、鉄道による東西分断、公園や川辺など憩いの空間が少ないこともそうだ。交通広場が狭いことも挙げられる。

 渋谷大改造は〝ダンジョン〟を解決するという使命を帯びる。そこで東急が打ち出すのが渋谷全体で「横方向の動線」と「縦方向の動線」を集約すること。既にいくつかの動線は整備済みで、ヒカリエやスクランブルスクエア、旧東横線渋⾕駅のホームと線路跡地などを再開発して18年に開業した複合ビル「渋谷ストリーム」では縦方向の動線に当たる「アーバン・コア」は稼働をしている。


将来、ヒカリエデッキは宮益坂から線路をまたいだ反対側の道玄坂方面へとつながる

 アーバン・コアとは「地下と地上を簡便に結び付け、歩行者のスムーズな移動を実現する筒状の吹き抜け空間」(同社幹部)。単に縦の移動だけであれば、エレベーターの数を増やせば良いが、「それでは街の回遊性が失われてしまう」(同)と考えた。

 地下から地上へと縦の移動ができると共に、駅や商業施設といった屋内と屋外を多層的につなぎ、どの階からも渋谷の街に人を送り出せる。東急では開業済みも含めアーバン・コアを駅周辺に9カ所設置する予定だ。

 具体的には、駅の西口にあった東急東横店の跡地や中小型ビル群が数多く建っていた駅南西部の「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」(23年度の竣工予定)でも新たに作られる。

 同時に、横方向の動線の整備も進む。その1つがヒカリエデッキだ。横方向の動線では、ビルの高さで言うところの1階から4階までの各階のレベルにおいてデッキが整備される。

 特に2階レベルでは駅のスクランブルスクエアを中心に東のヒカリエ、東南のストリーム、西の東急プラザ跡地の複合ビル「渋谷フクラス」、南西の桜丘口地区の新ビルなどが水平レベルで結ばれる。既にフクラスと駅西口を結ぶ「渋谷フクラス接続デッキ」と、マークシティと駅西口を結ぶ「西口連絡通路(仮称)」の2本は開通済み。西口周辺の施設を2階レベルでつなぐ「空中回廊」が完成している。

 駅前に歩行者デッキが整備されることで1階の地上にはスペースが生まれる。そのスペースを活用してハチ公広場を拡充する計画だ。また、地上にあるバスターミナルも再配置する代わりに、同じく地上にあるタクシー乗降場を地下化して集約する。

 別の東急首脳は「縦動線のアーバン・コアと横移動のデッキ。これらが整備されると、それぞれのビルや周辺の街に対する移動の制約から徐々に解放され、相当な回遊性が生まれる。そうすると、スムーズに歩いて行ける渋谷の街がどんどん広がる。渋谷が持つ独特の地形を上手く利用するイメージだ」と語る。

 前出の齊藤氏も「スカイウェイという背骨から各ビルへと毛細血管がつながっていくように人の流れができる」と見込む。ヒカリエデッキも駅方面だけではなく、ヒカリエに隣接する「渋谷二丁目17地区第一種市街地再開発事業」(旧シオノギ渋谷ビル、渋谷アイビスビル、渋谷東宝ビル、太陽生命渋谷ビル跡地)とも接続される予定だ。

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