2024-04-12

日本製鉄新社長・今井正が背負う課題、USスチール買収で労組・米社会をどう説得するか?

今井正・日本製鉄社長




「新しいものを生み出す」新人時代に感じたやり甲斐

 今井氏は1963年5月岡山県生まれ。88年東京大学大学院工学系研究科金属工学専攻修士課程修了後、新日本製鐵(現日本製鉄)入社。旧新日鐵出身者としては初の技術系社長。

 大学の工学部で金属工学を専攻したが、鉄鋼メーカーに進むことを意識したのは大学院に進学する際に「鉄」の研究室を選んだ時。「専門性が生かせる産業だと考えた。当時はプラザ合意後の円高で鉄鋼業が厳しい状況だったこともあり、リーディングカンパニーを志望した」

 配属されたのは名古屋製鉄所。トヨタ自動車との関係が深い製鉄所だが、今井氏が新人として初めて担当したのが、トヨタ向けの新たな高強度鋼材の量産化技術を確立するという仕事。「新しいものを世の中に生み出すというやり甲斐を感じた原体験になっている。新しい鋼材が使われた車が街を走るのを見つける度に、自分の子供を見るような気持ちになった」と振り返る。

 社長交代会見の際、現会長の橋本氏は「社長というのは知力、胆力がなければ、今の時代はリーダーシップを発揮できないが、今井は私を遥かに凌ぐ知力、胆力の持ち主」、「脱炭素を進めていく力という意味では、世界中の鉄鋼メーカーのエンジニアを集めても、今井の上に来る人はいない」と評した。

 その「胆力」が問われた経験として今井氏は前述の高炉休止を含む生産構造改革を挙げる。従業員や自治体など利害関係者が多く、社内にも異論がある中で、製鉄所とも直接対話を重ねるなど実現に向けて汗をかいた。

 今はUSスチール買収の成否が日鉄の今後の成長を大きく左右する状況。労組を説得し、実現できるかが問われる。その後に控える「脱炭素」に向けても今井氏が背負う課題は重い。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事