2021-03-30

【人気エコノミストの提言】第一生命経済研究所・熊野英生「ワクチン効果と日本経済」

景気回復の鍵を握るのが、ワクチン接種だとされる。医療関係者への接種はすでにスタートし、高齢者が4月から、16~59歳が夏頃(7月)に順次接種することになる。これで、コロナ感染のリスクを一気に遮断できるかと言えば、そうではないらしい。ワクチンを接種したから、感染しないということにはならない。

 インフルエンザの予防注射を思い出すとよい。かかっても、予防注射を打って体内に抗体ができていれば予防できる人が多くなる。感染症では、ウイルスが人から人へと感染する。皆がワクチンを接種していると、予防できる人が多くなって、人から人への感染の輪が連鎖しにくくなる。国民の6~7割が抗体を持つことで、感染の連鎖を小さくすることが可能になる。連鎖がなくなると、そこで感染は終息する。国民の6~7割が抗体を持って、連鎖しにくい状態を「集団免疫」の獲得と言っている。

 この状態に至るまでには相当に時間がかかる。ワクチンの供給不足や、副反応を警戒して自分は打ちたくないと考える人も多くいて、一筋縄ではいかないという見方だ。英調査会社は、日本の集団免疫の獲得は2022年4月とする。欧米が21年内に集団免疫獲得に至るのに比べると遅れる見通しである。

 さて、この間の日本経済はどうなるか。免疫を持たない人が多く残るということは、感染が群発するリスクが21年内はまだあるということだ。人々はマスク着用と手洗いを続けて、感染リスクのある行動を慎む。東京五輪の始まる7月23日までは、たとえ緊急事態宣言を解除しても、政府と自治体は慎重に行動することを呼びかけるだろう。飲食店の利用や旅行は、コロナ前の需要を取り戻せないとみられる。Go Toキャンペーンなどで、そうしたサービス需要を喚起することも、東京五輪までは控えると予想する。

 また、期待されている東京五輪の経済効果も小さいものになるだろう。建設需要はすでに出尽くしていて、五輪を機に訪日外国人が増えるという見通しも成り立ちにくい。

 五輪が終了してからも、感染が群発するリスクに警戒し続けることになる。秋から冬になると、感染リスクへの警戒感は再び強まって、集団免疫獲得まで我慢することになるだろう。

 その一方で、日本の製造業は割と堅調に業績を上げるだろう。日本よりも欧米では集団免疫の獲得のタイミングが早いと予想されるからだ。世界的にモノの取引は正常化が先行する。それが貿易取引の活発化を促し、モノの生産活動はコロナ感染の終息に先んじて活発化していくことになろう。非製造業では、個人向けサービスこそ低調だが、建設・情報通信など復活していくだろう。
 
 21年の経済は、ワクチン効果で一気に全体が回復するのではなく、二極化が進んで業種によって回復の経路がばらけることになるだろう。

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