2024-03-01

森本敏・元防衛大臣 を直撃! ウクライナ・パレスチナ2つの戦争の現状は?

森本敏・元防衛大臣



トランプ氏が再び大統領になったら…



 ─ 米国の支援は、「もしトラ(もしトランプ氏が米大統領選で勝てば)」から「ほぼトラ(ほぼトランプ氏が勝つだろう)」になるとどうなるのですか。米国では支援疲れという声も大きいですが。

 森本 トランプ前大統領が復活したら、ウクライナ支援をやめる動きが強まるかもしれません。その代わりにヨーロッパ同盟国に防衛費を増やさせて、NATO(北大西洋条約機構)にもっと関与させ、米国はゆっくりとウクライナから手を引こうとするでしょう。中東はそういうわけにはいかないと思いますが。いずれにしても、最近まで、「もしトラ」と言われていたのが、今では「ほぼトラ」と言われるようになりました。

 少なくとも予備選挙はそうなるでしょう。本選挙はまだわかりませんが。

 ─ では、トランプ氏が大統領に返り咲いた場合にどういうことが想定されますか。

 森本 予測されることは、第一に、約200万人になる不法移民を米国から追い出す。第二は、米国の重要インフラ建設に投資する中国企業を排除する。

 第三は、世界貿易機関(WTO)における中国の最恵国待遇(MFN)を撤廃する。第四は、中国から米国への輸入関税を30%から大幅に引き上げるという見方があります。ともかくバイデン大統領のやってきたことを否定するでしょうから、パリ協定(地球温暖化対策の国際枠組み)、IPEF(インド太平洋経済枠組み)からも脱退するという懸念もあります。

 もっとも、パリ協定は2020年にトランプ大統領が離脱し、21年1月にバイデン政権が発足直後に復帰したという経緯があります。

 ただ、「Quad(クアッド=日米豪印4カ国の戦略対話)」はトランプ大統領時代につくったものなので、これは止めないだろうと思います。

 ─ こうした国際間の枠組みの大半を壊すとなると、これは米国自身がリーダー国であるということを放棄することになりませんか。

 森本 トランプ氏は恐らく、別の方法でリーダーシップをとろうと考えているのだと思います。とにかく、トランプ氏が再び大統領になったら、米国は自国の国益追求をさらに重視し、現在の国際秩序はどんでん返しのようなことが起こるでしょう。

 米国にはスイングステート(大統領選のたびに勝利政党が変わりやすい激戦州)が7州くらいありますが、現時点では、これらの州はいずれもトランプ氏有利です。

 現在、共和党の候補者選びである予備選挙において、トランプ氏が圧勝しそうな勢いです。すでにデサンティス氏が選挙戦から離脱し、ヘイリー元国連大使が最後まで続けられるのかどうか、また、誰が副大統領候補になるのかも注目されます。

 一方の民主党もバイデン大統領は高齢で前回と違って非白人や若者に人気が無いし、かといって副大統領のハリス氏も人気が無い。今回の大統領選挙は混乱すると思います。

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