2024-03-01

森本敏・元防衛大臣 を直撃! ウクライナ・パレスチナ2つの戦争の現状は?

森本敏・元防衛大臣

ウクライナは難しい局面に



 ─ ロシアによるウクライナ侵攻は早くも2年が経ち、米国では秋の大統領選挙に向けた予備選挙が各地で始まっています。こうした世界の動向をどのように受け止めていますか。

 森本 国際秩序の混乱と迷走が一層、深まっています。世界中で混乱が見られ、国連は機能していません。

 ウクライナ戦争の戦況は膠着状態ですが、兵員数も装備量もやや、ロシアが有利な状況です。ロシアの兵員は現在30万人で、さらに30万人を動員しようとしています。また、さらに約45万人以上を徴用しようとしていますが、その約4割を獄中にいる罪人から賄おうとしています。罪人は戦闘に加わるなら、任務を果たした後で免罪にして給料も出すということで、徴用に応じるようです。

 ロシアがキーウ(ウクライナの首都)付近に撃ち込んでいるミサイルは北朝鮮から供与された短距離弾道ミサイルです。また、あまり質は良くないようですが、弾薬も100万発供与したと言われ、ロシアは非常に助かっている。プーチン大統領は再選後に訪朝すると言われているのですが、北朝鮮がロシアから見返りに何をもらっているか分かりません。

 ─ 小麦などの食料もあるんですか。

 森本 食料やお金より、むしろ、偵察衛星のような衛星技術やミサイル技術ではないかという説もあります。

 一方で、ウクライナからは3万人弱の兵が国外に逃げています。これは腐敗によるものでしょう。ウクライナ軍のザルジーニ総司令官は国民からの人望があり、ゼレンスキー大統領には批判的で、二人の関係がギクシャクしていると言われていました。次期大統領選挙の際には、ゼレンスキー大統領にとって最大の政敵になるからとも言われています。2月8日の報道によると、同総司令官の辞任とシルスキー陸軍司令官の採用が公表されたところです。

 ─ 肝心のウクライナの内部が分裂すると、先行きが懸念されます。ウクライナの大統領選挙はどうなりますか。

 森本 本来なら5月に任期が切れるんですが、ゼレンスキー大統領は選挙ができる状態ではないと言って選挙時期を明言していない。

 一方、ヨーロッパの国々には、それは民主主義のルールに反するので、任期が来たら選挙すべきだという意見がある。ゼレンスキー大統領にとっては難しい選択です。米国では共和党陣営の反対もあり、支援法案が成立しない。ヨーロッパ各国の支援も概ね止まっていますから、ウクライナは兵員も弾薬も不足という状態で、このところ、ゼレンスキー大統領はドローンの増産とドローン部隊編成に努力しているところです。

 ─ イスラエルとハマスの闘争はどうなりますか。

 森本 どうにもなりません。イスラエルはハマスの司令官を拘束するまで作戦を続け、ガザ南部のラファに捜索の手を広げています。これが終わらなければ一時停戦にも応じません。

 ─ 人質はまだどれくらいいるのですか。

 森本 136人だと思います。ブリンケン米国務長官は何度も、イスラエルに行って説得していますが、イスラエルは応じません。

 ─ しかし、フーシー派などの攻撃も続いていますね。

 森本 ハマスがイスラエルと戦っている限りは、フーシー派やイラク・シリアの親イラン勢力も、彼らを支援せざるを得ない。米国なども、これに対して戦闘の拡大を抑止する必要がある。しかし、イランが本格的な攻撃をする段階にはないと思います。

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