2024-02-27

【財務省】円安が日本経済に冷や水? 賃上げ機運が萎むリスクも

足元の東京外国為替市場の円相場で円売り・ドル買いが進み、円安が回復途上にある経済に冷や水を浴びせかねないとの懸念が強まっている。

 2月14日、鈴木俊一財務相は財務省内で為替市場の動きを「高い緊張感を持って見守っていきたい」と述べた。これに先立ち、財務省の神田眞人財務官が記者団に「適切な対応をしていく」と語り、円安の動きをけん制したが、同省内で「目立ちたがり屋」(中堅)と揶揄される神田氏の〝介入〟は、過度な円安回避に向けて一定程度の効果はあるのだろうか。

 今年の為替相場は岸田文雄政権と日本経済にとって、重要な意味を持つ。政府は、今年に入って落ち着きつつある物価高を上回る賃上げを実現し、デフレからの完全脱却を目指す青写真を描く。しかし、円安基調が続けば、原材料の多くを輸入に頼る食品の値上げや資源高が高止まりし、民間企業、特に中小企業の賃上げ機運がしぼむリスクをはらむ。

 円安を巡っては、首相肝いりの資産運用立国の柱の一つである、新たな少額投資非課税制度(新NISA)に伴う外債や海外株への投資が円安を招いているとの指摘もある。政権は丁寧でわかりやすい説明を求められる局面だ。

 加えて、6月実施の所得税と住民税の定額減税について、国際通貨基金(IMF)が9日、「成長に及ぼす影響は限定的だと予想される」と指摘した。

 IMFのギータ・ゴピナート筆頭副専務理事はSNSで「鈴木氏と有意義な会談を行った」と発信した。財務省内には鈴木氏を「大物政治家らしく泰然としている」(幹部)と好感する声もあるが、裏を返せば扱いやすい大臣ということだ。

 自民党は「政治とカネ」の問題を受けた派閥解消を受け、今後、閣僚人事は能力本位になる可能性がある。今春以降の経済状況次第では、鈴木氏もその対象になるかもしれない。

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