2024-02-20

トヨタ・豊田章男に課される「現場力の再生」と「経営陣のガバナンス」

「トヨタ産業技術記念館」で新たに策定したグループビジョンを説明するトヨタ自動車会長の豊田章男氏



顧客でなく上司に目を向ける現場

 14年前に社長に就いた豊田氏は、それまでの規模拡大が仇となって創業以来の赤字に陥った同社を「一度潰れた会社」と表現して危機感を社員と共有した。その間、どんな人にも移動の自由を提供できるフルラインナップメーカーとして商品を充実させて収益性を高め、新車販売台数において4年連続で世界首位になるまでに成長させた。時価総額も日本企業で初めて50兆円を超えた。

 しかし、その一方で「管理職は経営層の顔色をうかがって現場感覚を失った。そして、現場も顧客ではなく上司の方ばかりを向いてしまった」と企業のガバナンスに詳しい青山学院大学名誉教授の八田進二氏は指摘し、「自分を律することができる管理者の教育が徹底的に求められる」と話す。

 約37万人の従業員を抱えるトヨタグループを豊田氏や社長の佐藤恒治氏だけで管理することなどは不可能だ。だからこそ、経営層の思想や危機感を受け継ぐ管理者の役割が重要になる。

 豊田氏は17社の株主総会の全てに出席するとし、グループのビジョンとして「次の道を発明しよう」を共有した。「発明」はグループ創始者・豊田佐吉翁の原点。これを旗印に経営層はもちろん、現場で働く社員一人ひとりの意識改革がトヨタグループ再生に向けた第一歩となる。

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