2024-02-01

三菱UFJFGが総力を上げる「資産運用戦略」、銀行、信託、資産運用会社などグループ横断

MUFGは資産運用を「第4の柱」とすべく取り組みを始めた



 なぜ、この変革を必要としたのか? 販売会社(三菱UFJ信託)と、運用会社(三菱UFJアセット)が「親子関係」になっているのが現状だが、日本でも「顧客本位の業務運営」の中で、資産運用分野の「製販分離」が進む。「ファイヤーウォール」は設けているものの、より販売と運用が対等であることを、より明確にすることにしたのだ。

 もう1つ、大事なのが資産運用を「柱」とするからには「三菱UFJアセットの会社としての『格』を上げていくことが必要だった」(三菱UFJ信託銀行アセットマネジメント事業部部付部長・弓場則和氏)。持ち株直下になることで銀行、信託、証券と並列の関係となる。さらには銀行や信託にある一部の市場運用機能を三菱UFJアセットに集約する方針。

 また、今回は明確な数値目標も設定。MUFG全体で2030年3月までに運用資産残高(AUM)を、足元の約100兆円から200兆円に倍増、業務プロセス委託(BPO)も40兆円から100兆円と倍増以上にすることを目指す。

 MUFGは今後、銀行、証券、生命保険など資産運用に関わる他社も戦略強化に乗り出してくると想定している。その中で他社にない強みを「グローバルな『グループ総合力』」と定義。

「戦略を打ち出すだけでなく数値を含め、アグレッシブな目標を打ち出すことで、資産運用立国の実現に貢献する強い〝覚悟〟を世の中に示すことが重要だと考えた」と黒石氏。

 資産運用の他、資産管理・企業年金などの受託財産事業を統括するMUFG受託財産企画部次長の碓井仁氏は「数値は結果。お客様からの信頼をいかに集めるか。自社の運用力強化に加え、BPOを通じて日本の資産運用業界全体にインフラを提供している。さらには金融経済教育への取り組みなど幅広い取り組みができるのが我々グループの強み」と強調。

 銀行、証券、信託、そして資産運用と、あらゆるチャネルから幅広い顧客層にアプローチし、各社のサービスにつないでいく。

 また、この15年間、出資・提携している米モルガン・スタンレーとの関係は、MUFGの大きな力になってきた。まだ具体策は詰まっていないが、資産運用においてもモルスタとの連携はカギを握る可能性がある。

 1つ、業界で注目されているのが三菱UFJアセットの投資信託「eMAXIS Slim」という商品。投信ブロガーが選ぶ投信で5年連続1位を獲得するなど、個人投資家からの人気が高い。

「20年前には考えられなかった。投資にアクセスしやすくなったという時代の変化をうまく捉えることができた商品ではないか」とは三菱UFJアセット執行役員デジタル・マーケティング部長の吉田研一氏。

 三菱UFJアセットは近年、投信や資産運用をどう根付かせるかに知恵を絞ってきた。政府が「資産運用立国」を推進する今は「大きな転換点。当たり前のように投資される環境、資産運用が社会のインフラになることが究極の理想」と吉田氏。

 2030年の日本の投資環境は見通せないが、国民にとって資産運用へのハードルが下がり、「眠れる資産」だった個人の現金・預金1100兆円が投資に向かって、その資金が日本企業の成長につながるという循環ができていることが期待される。

 資産運用は10年、20年単位で進める必要があるビジネス。今後、MUFGとして経済環境の変化があっても粘り強く継続できるかが問われている。

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