2024-01-22

《早稲田大学発ベンチャー》エコロギーが目指すサステナブル経営「環境・食料・健康問題の同時解決を目指して」

葦苅晟矢・エコロギー社長

循環、分散がキーワード



「新しい食料資源としてコオロギはかなり有望。栄養価が高くて、生産効率が良い。世界人口が増加していく中で、人に不可欠な食料資源であるタンパク質をいかに循環的に活用できるか、環境に負荷のかからない形でサステナブル(持続可能)にできる仕組みは無いかと考え、辿り着いたのがコオロギだった」

 こう語るのは、エコロギー社長の葦苅晟矢(あしかり・せいや)氏。

 早稲田大学発の昆虫食ベンチャーとして、コオロギを活用したペットフードや食品の開発を行うエコロギー。社名はエコとコオロギを掛け合わせたもので、コオロギという昆虫食で環境問題と食料問題の同時解決を目指している会社である。

 コオロギは牛肉や鶏肉など、一般的に高タンパク質と知られる食材よりも更に豊富なタンパク質を含む。コオロギの粉末は約65%が動物性のタンパク源だ。また、牛のゲップが温暖化ガスであるメタンガスの発生源になっていることは有名な話だが、牛肉生産に比べて、4%しか温室効果ガスを排出しないというメリットがある。

 いろいろな昆虫がいる中でもコオロギは雑食性が強く、何でも食べる。そのため、通常捨てられてしまう食品や農業から排出される残渣や廃棄物を餌として、フードロスの解決を図ろうというのが葦苅氏の考え。

 葦苅氏は2017年、早稲田大学大学院先進理工学研究科在学中にエコロギーを創業。19年に単身で東南アジアのカンボジアへ移住。早稲田で研究した生産ノウハウなどの知見を投入し、カンボジアでコオロギを生産している。日本人にはほとんど馴染みがないものの、カンボジアではコオロギを食べる文化があるという。日本の信州でイナゴや蜂の子を食べる文化があるが、それと同じ感覚だろうか。

「日本では暖房をきかせてコオロギを生産しなければならないが、カンボジアは自然な環境で生産できる。温暖な気候に加え、コオロギを食べる文化のある国だということでカンボジアをスタートの拠点に選んだ。また、カンボジアでは高床式住居に住んでいる人が多いので、床下で副業的にコオロギを生産することができる」(葦苅氏)

 同社のコオロギ生産方法はユニークだ。一極集中の工場大量生産ではなく、地方に散在する現地農家に生産を委託する分散型生産が基本。日本で培った効率的で栄養価の高いコオロギの生産方法を現地農家に伝え、コオロギを生産。生産されたコオロギを原則全量買い取る。

 農家が自宅の軒先でコオロギを卵から育て、収穫するのにかかる期間は平均45日。農家には年8回の現金収入が入るため、安定的な収入源になっている。同社はそこで生産されたコオロギを粉末にし、加工して、商品化するという仕組みを構築。

 現在はコオロギを活用したペットフードや食品の開発を行っており、ペットフード製造大手のドギーマンと共同でハムスター向けのペットフードを開発したり、老舗の醤油醸造所と組んでの醤油開発やコオロギの粉末を練り込んだチョコレートなどを商品化している。

「わたしたちが成し遂げたいことは、食料問題、環境問題を、持続的に食を通じて解決していくこと。循環、分散をキーワードに考えていて、一極集中した大規模工場で大量生産するのではなく、分散的に誰もが、いつでも、どこでも生産できるようなサステナブルな世界をつくっていきたい」(葦苅氏)

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