2024-01-22

《早稲田大学発ベンチャー》エコロギーが目指すサステナブル経営「環境・食料・健康問題の同時解決を目指して」

葦苅晟矢・エコロギー社長




食べる価値のある健康食品を開発する!



 葦苅氏は1993年生まれの30歳。早稲田大学で生物学、食料資源の問題を研究しており、FAO(国際連合食糧農業機関)が昆虫食に関する報告書を公表したこともあって、昆虫食の可能性に着目。自宅でコオロギを飼いはじめた。

「度々コオロギが逃げ出したりした(笑)」(葦苅氏)経験もありながら、大学でも生産したが、なかなか1万匹の壁を超えることができない。そこでコオロギ農家がいるというカンボジアへ渡り、安定的な生産ができるようになった。

 当初は協力農家も数名程度だったが、徐々に生産農家が増加。現在は約65軒の農家と契約しており、年間10トン(1億匹)以上のコオロギ粉末を生産。アジア有数の生産規模になった。

 もっとも、日本で昆虫食は〝ゲテモノ〟というイメージが先行している。実際、同社が市場調査を行ったところ、8割の人はまだ昆虫食を食べたことが無く、あったとしても約半分の人が再購入しないと回答。最初は面白半分で食べたとしても、環境にいいからと言って、わざわざ2回、3回と食べようとは思わないのが現状だ。

 そうした壁を乗り越えるため、同社が取り組んでいるのが、美味しく手軽に楽しめるような商品開発。コオロギには前述したタンパク質の他、亜鉛や鉄分などのミネラルも豊富に含まれていることから、自然由来の鉄分や亜鉛を摂取できる栄養バーを開発。20~40代の日本人女性は21%が貧血、かくれ貧血を含めると65%もいるとされ、女性の貧血対策になる新商品の開発にも乗り出している。

「最後は消費者がメリットを感じられるかどうか。どんなに環境にいいから食べましょうと言っても、昆虫を食べるメリットが無いとなかなか食べない。そこは健康消費に訴えていくしか無いと考えていて、女性の貧血予防につながるとか、メリットをきちんと発信することが大事。食べる価値のある健康食品を開発することで、地球の環境問題、食料問題、健康問題の同時解決を目指す」と語る葦苅氏。

 昆虫食が根付くにはまだまだ時間がかかるだろう。しかし、循環的な仕組みづくりという点で葦苅氏が目指すサステナブル経営への挑戦が注目される。

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