2024-03-13

ボルテックス社長兼CEO・宮沢文彦「オフィスビルを借りるだけでなく、『買う』という発想があっていい。不動産を活用した社会課題解決を」

宮沢文彦・ボルテックス社長兼CEO




「優れたロジックは本質に近い」

 ─ 少し振り返って、宮沢さんの来歴に触れたいのですが、証券業界を志望した理由は何でしたか。

 宮沢 当時「金融ビッグバン」が行われて、業界間の垣根が低くなっていたことと、金融デリバティブが急速に浸透していたことが背景にありました。特にデリバティブには非常に面白みを感じましたね。

 様々なストラテジーを学んだ結果、「投資は逆張りだ」というのが、投資に対する私の解釈でした。ただ、有価証券の逆張りは、皆が目を光らせていますから難しいです。個別指標がたくさんあり、割安になると目立ちやすい。ですからプロ投資家やコンピューターの方が早く見つけてしまい、個人投資家や優秀な営業マンでは遅いのです。

 また、証券営業として提案するのは金融商品ですが、お客様の投資対象は不動産、絵画、映画制作、原野など幅広いのです。その中で「パワーがあるな」と感じたのが不動産でした。

 ─ そうして不動産業界に飛び込んだと。

 宮沢 はい。不動産業界に入る前後に感じたのは、金融商品は好みではなく儲かるか儲からないか、割安か割高かというところだけ見ます。ただ、不動産は好みで見る人が多いので割安、割高が生まれやすいということです。それは例えば、新築マンション、中古マンションの価格に如実に表れるのです。非常に面白い市場だと思いましたね。

 さらに不動産は融資を使いますが、銀行の融資姿勢が割安、割高に輪をかけるのです。人気がなく、取引されないものには融資も出ず、叩き売りされやすい。好みと融資姿勢で割安が生まれるに違いないから、これを商売にすべしと思ったのです。

 ただ、私は商業系のものをやった方がいいと思っていましたが、当時所属していた会社はレジデンスしか手掛けていませんでした。私はこのマーケットは絶対必要だと思っていましたから譲らず、最後は追い出されるような形で仲間と独立して、ボルテックスを創業したのです。

 ─ これは一大決断でしたね。そうして「区分所有オフィス」という概念で事業を始めたわけですが最初、受け入れてもらえましたか。

 宮沢 概念としては受け入れてくれるのですが、行動としては怖いからやらない、実績のない会社の提案には乗れないという人がほとんどでした。厳しい状況でしたが食べていくことはできるという状態が10年ほど続きましたね。

 この我慢する力は、我々の強みでもあります。普通は売れなければ諦める人が多いと思いますが、我々は諦めずにやり続けてきた。それはロジックとして優れているという確信があったからです。優れているロジックは本質に近い可能性が高い。

 ─ その時のロジックはどういうものでしたか。

 宮沢 多くの人はマンションの分譲された1室を買い、1棟では買いません。また、ビルの使用形態も賃貸で部分的使用ですが、所有になった時になぜ1棟なのか?ということです。これを分けて所有するというニーズはあるはずだと。1人で50億円のビルは所有できないので、10人で5億円ずつ所有しましょうという共同所有、シェアビジネスのような考え方です。

 レジデンスは他社が手掛けており、そこだけでは独自性はありません。前の会社を追い出されてまでやっているのだから、自分なりの「逆張り」を立証しようという思いもありました。食べるためだけにイージーな商売をしてもしょうがないと思ったのです。

 また、「逆張り」の投資で怖いのはデフォルトです。金融商品はデフォルトしてしまうので逆張りは難しく、そのギリギリを見抜くのがテクニックです。一方不動産はデフォルトがないというか、価値はゼロになりません。ゼロ価値がないのだから、割安になっているものが損するはずがないという鉄のような信念がありましたから、負けることはないと思いましたね。

 ─ 本質的なものを追求し続けて、ここまで来たということですね。

 宮沢 そうですね。自分の中にいろいろな価値観はありますが、会社では言葉として「パーパス」や「アイデンティティ」という言葉で表現しています。

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