2023-12-29

【2024年をどう占う?】答える人 INPEX会長・北村俊昭

北村俊昭・INPEX会長

エネルギートランジションも現実的なアプローチが必要



 ─ INPEX会長の北村俊昭さん、改めて、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立をどのように図っていきますか。

 北村 今、世界は「グローバルなエネルギー危機」に見舞われており、構造的なエネルギーの需給逼迫と価格の高止まりという難局に直面しています。

 やや極端な言い方になりますが、数年前までは全世界が脱炭素に向かうことだけを考えていたように思います。それはエネルギーの安定供給はあまり心配ないと思っていたからでした。

 ところが、ロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギーの安定供給、経済成長、そして脱炭素のバランスを考えるべきだという方向になってきました。

 その流れの中で、今年は特に、各国・地域が置かれた状況によって、カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)を目指すという目標は共有するけれども、それぞれの国情にあったいろいろなアプローチがあるはずとの考え方が強まってきたように感じます。

 例えば、従来ヨーロッパは日本やアジアの国々に対して、石炭火力を使用するのは脱炭素に逆行すると非難していましたが、国ごとの脱炭素政策を認め、現実的なアプローチが必要だという方向に、この1~2年で変わってきたように思います。

 ─ ある意味で当然だと思いますが、大きな変化ですね。

 北村 日本はエネルギー自給率が11%と、世界でも最も低い国の一つですが、これまでも「S+3E」を基本とするバランスのとれた政策を進めてきています。これから日本は、アジアの現実的で円滑なエネルギートランジションを支援していく流れになっていますので、これからの日本の役割は大きいと思います。

 ─ そうなると、石油や天然ガスの探鉱・開発・生産を手掛けるINPEXの役割も大きなものになってきますね。

 北村 ええ。当社は総合エネルギー企業として、エネルギーの安定供給と脱炭素の二つを両立させることを目指しています。

 石油やLNG(液化天然ガス)の需要がピークに迎えるのは相当先と見込んでおり、石油やLNGについては徹底的なクリーン化をする、即ちCO2の回収・貯留(CCS)および、利用を加えたCCUSなどを活用してCO2の排出を小さくしながら、安定供給を目指します。現在、当社の石油、LNGの生産は日本の需要の約1割ですが、2030年代には、その割合を大きく伸ばしていく計画です。

 また同時に再生可能エネルギー、水素やアンモニアなどのクリーンエネルギーの分野についても積極的に取り組みます。当社は30年までに4兆円の投資計画があり、3兆円は石油と天然ガス、1兆円はゼロエミッション分野に投資する予定です。

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