2023-11-23

ホンダが進める〝完全無人タクシー〟の成算「時間や空間からの解放と人の能力の拡張を」

ホンダが無人運転タクシーを目指す「クルーズ・オリジン」



立ちはだかる壁の数々

 そして、このビジネスの肝は自動運転技術だ。自動運転技術を提供するクルーズの技術はインフラとは連携しない自律型。高精度地図や遠隔監視システムを使用している。同社の配車サービスは米サンフランシスコやオースティン、フェニックスなどで有償提供されている。

 その走行距離は既に800万マイル(1284万キロ=地球321万周)。世界でもトップクラスだ。運輸総合研究所会長の宿利正史氏は同社の自動運転技術に関して「自動運転にすることで、もっと安全にしようというコンセプトだ」と評価する。自動運転にしたら危ないという価値観から〝安全だから自動運転にする〟という考え方の転換だ。

 しかしながら、道は険しそうだ。まずは、肝心のクルーズが米国で事故を起こし、全米で運行停止を余儀なくされている。また、国内に目を向けると、関係省庁と連携して緩和規定の活用や最終的な型式認証に向けた取り組みも必要だ。

 何よりも運転手のいない車両が街中を走ることに、「どれだけの人々が受け入れるかという社会受容性の問題もある」(アナリスト)。しかし、自動運転の技術革新は確実に進む。三部氏は社内に向けて「単なるものづくりだけでは生き残っていけない」と発破をかけ、新たなチャレンジを鼓舞している。トヨタや日産自動車などに先駆けて日本初の事業に挑むホンダ。その挑戦魂が正念場を迎えている。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事