素材に「言うことを聞かせる」技術
─ 改めて、中興化成工業が手掛ける「フッ素樹脂」の良さ、可能性について聞かせて下さい。
庄野 世の中にある人工で作った素材の中では、あらゆる意味で一番タフです。
タフという時には、いろいろな定義があると思いますが、熱や強い薬品などでも溶けないですし、紫外線にも強い。「フォーエバー・ケミカル」と呼ばれるくらいです。
非常に強い分、加工が難しい素材でもあります。言うことを聞かないわけです。言うことを聞かない樹脂の言うことを聞かせるわけですから、そこに技術が必要なのです。
─ 他社が真似できないということは言えますか。
庄野 真似しにくいとは言えると思います。ですから我々は、フッ素樹脂の加工で培った、素材に「言うことを聞かせる技術」を他の素材で生かしていこうとしています。
一番ハードルの高い素材を加工しているわけですから、例えばシリコーンなど、他素材の場合、更に強みを生かせるのではないかと考えています。
我々以外にも技術を持った企業はあり、時には競合することもありますが、どちらかと言えば、お客様が持つ課題が違う場合が多いですから、お互いに違う課題を個別に解決しているという感覚があります。
─ 逆に、フッ素樹脂が抱える課題はありますか。
庄野 欧州などで、環境問題からフッ素樹脂も含むPFASの使用を制限する「欧州PFAS制限案」が検討されています(PFASは有機フッ素化合物の総称)。
それに対しては、PFASで問題になっているのは非常に一部のもので、フッ素樹脂は関係ないということを説明しています。即ち、問題があるのは「特定PFAS」であり、フッ素樹脂は分子量的にも別物であることを伝えると同時に、その特性からも体内には吸収されず、産業や社会に欠かせない樹脂であるというメッセージを出し続けているところです。