2023-10-16

【サントリー】ウイスキーづくり100年 麦芽や酵母による自然の営みを見つめ直す〝熟成ビジネス〟

リニューアルした「サントリー白州蒸溜所」内にある「ビジターセンター」



なぜ利益率が高いのか?

 サントリーにとって白州は、花崗岩に磨かれた良質な「水」を生み出す場でもある。2代目社長の佐治敬三氏と初代チーフブレンダーを務めた大西為雄氏が「良質な水を追い求めて全国を実地調査して辿り着いた」(関係者)という。その水を使って手作業による仕込みなどを経て、空調のない貯蔵庫で何年も熟成させる。

「天使の分け前」─。ウイスキーは樽の中で熟成する間、樽のすき間から少しずつ蒸散し、その量を減らしていく。その割合は年間2%から4%とも言われ、中には長い年月の間に大半がなくなってしまうといったケースもあるほどだ。自然の恵みで生まれるお酒と言える。

 そんなウイスキーを含むサントリーのスピリッツ事業の利益率は高い。売上収益約2兆9700億円のうちの約2979億円、営業利益約2765億円のうちの約507億円を占める。

 栗原氏は「ウイスキーの事業は総じて利益率が高いが、長い時間をかけてものづくりをコツコツ積み重ねてきたことで、お客様にはプレミアム価値を認めてもらえる。高くても手に取ってもらえることが高い利益率につながっている」と話す。


世界的な評価も高い「白州」

 ウイスキーは大量生産ができるビール類とは違い、熟成させる年月が必要になる。いま評価されているサントリーのウイスキーは先人たちから受け継いできた原酒や技術によるものだ。いま仕込んでいるウイスキーが5年後、10年後、さらには20年後に花開くことになる。

 サントリーは山崎蒸溜所でもフロアモルティングや小規模蒸溜施設の改修などを実施する。硬質な水を使う山崎と軟質な水を使う白州それぞれの特長を生かしたウイスキーを広げていく。

 デジタル時代を迎え、スピードと量が求められるいま、〝熟成〟と〝質〟とのバランスをどうとるか。原点を見つめ直し、じっくりと商品を作り込むことの大切さが実感できる白州蒸溜所。足元の原酒不足や原材料高騰という逆風が吹く中、サントリーホールディングスの経営の熟成度が試される。

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