2023-10-04

SBIホールディングス・北尾吉孝氏に直撃!「金融を核に金融を超える。金融に加えて半導体事業など『世のため人のため』を軸とした事業展開を」

北尾吉孝・SBIホールディングス会長兼社長




先人の経営者から多くの教えを受けて

 ─ 改めて、北尾さんが創業したのが1999年ですから日本の金融危機の中でしたね。

 北尾 金融危機の中で出発し、その後もリーマンショックを始め、様々な危機があった中で、順調に成長してきました。知恵と工夫と努力とみんなの頑張りのおかげで、ここまで来ました。その間、都市銀行は統合してメガバンクになるなど、様々な変遷がありました。

 競合ひしめく中で、証券口座数やベンチャーキャピタル事業では断トツですし、グループ全体の銀行業の総資産は約26兆円ですから、地方銀行グループの大手に近い。

 この短期間でここまで拡大できたのは、やはり天助だと思うんです。ではなぜ天が助けてくれるのかというと、ひとえに「世のため人のため」を貫いてきたからだと。この思想がなければ、絶対に天は助けてくれないと思います。これは例えば、昨年8月に亡くなられた京セラ創業者の稲盛和夫さんなどもそうだったと思うんです。

 ─ 北尾さんは稲盛さんとはどんな接点がありましたか。

 北尾 最初はビジネス誌の対談でお会いしました。印象的だったのは、稲盛さんの戸籍上の誕生日は1月30日なのですが、実際に生まれた日は1月21日で、お母さんが役所に届けるのが遅れたらしいんです。

 実は、私の誕生日も1月21日で同じ日なんです。「四柱推命と言われますが、生まれた月日が一緒だというのは、それ自体大変なご縁を感じます」という話をしたのを覚えています。

 その後、稲盛さんが主宰していた経営者塾「盛和塾」では、私が会員以外での最初の講師を務めさせていただきましたし、稲盛さんが日本航空の会長として再建に取り組んでおられる時期、私が親しくしている韓国の経営者から頼まれて、稲盛さんに韓国での講演をお願いするなど、様々な交流がありました。大変尊敬していましたから、亡くなられたのは本当に残念です。

 ─ 稲盛さんは「自利利他」、世のため人のためという思想を持っていましたね。

 北尾 その意味で私は、世のため人のためという思想を持った方を尊敬しています。稲盛さんの他、渋沢栄一さん、松下幸之助さん(パナソニック創業者)、出光佐三さん(出光興産創業者)、そして、ご存命の方ではセブン&アイ・ホールディングスを成長させてきた鈴木敏文さん(現名誉顧問)には、多くのことを勉強させていただいています。

 ─ 野村證券に在籍していた北尾さんをスカウトして、共に事業を進めてきた孫正義さん(ソフトバンクグループ会長兼社長)は北尾さんにとってどういう存在ですか。

 北尾 私がソフトバンクにいた頃、取締役会では孫さんの意見に反対し、けちょんけちょんに言っていました。その中でやはり孫さんがすごいなと思うのは「取締役会でけちょんけちょんに言われるとムッとすることもある。だけど、北やん(北尾氏)は私のため、ソフトバンクのために言ってくれている。だからありがたい」と言ってくれることです。

 孫さんは、様々な逆境をバネに、試練を乗り越えてきたことが、彼の強さをつくってきたのだと思います。私にとって孫さんはデジタル情報革命の同志であり、お互いに学び合う関係だと思っています。

 ─ 孫さんのことは、NECの関本忠弘さん、昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)の鈴木治雄さん、シャープの佐々木正さんといった大企業経営者が応援しましたね。

 北尾 ええ。そういう魅力のある人です。孫さんに関連して印象的なエピソードがあります。私は今年3月に亡くなられたイトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さんに非常にかわいがっていただいており、野村證券を辞めてソフトバンクに行く際には報告に行きました。

 伊藤さんから「北尾君、辞めてこれからどうするの」と聞かれて、「伊藤さんはご存知ないかもしれませんが、ソフトバンクという会社に行こうと思うんです」と答えたところ「孫君のところ?よく知っているよ」とおっしゃるんです。

 続けて「彼は天才だよ。ただ大きな欠陥がある」と伊藤さんがおっしゃるんです。私が「それは何ですか」と聞くと、「彼は事業欲が強すぎる。ただ君なら孫君に対抗できる」と。慧眼だなと思いましたね。

 ─ 伊藤さんは2人の関係をよく見ていたんですね。

 北尾 そうです。ただ、私自身も事業欲が強い部分がありますから。大阪・船場には「屏風と事業は広げれば広げるほど倒れやすい」という言葉がありますが時々、伊藤さんの言葉を思い出して自制しているんです。

 ─ 事業を進める上では、人との「縁」は欠かせませんね。

 北尾 事業は1人ではなかなかできませんが、一緒に歩む仲間をつくるためには人間的魅力がなければいけません。人間的魅力が人を惹きつけ、その知恵を結集して、新たな挑戦ができるということだと思います。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事