2023-08-03

明治安田生命社長・永島英器の『生保の使命』論 「デジタルを活用しながら最後は『人』」

永島英器・明治安田生命保険社長




各地のビルを再開発、不動産に「社会的価値」を

 明治安田は19年に10年間で約3500億円を不動産に投資する計画を公表するなど、低金利下における長期・安定収益確保と地域貢献という2つの軸で不動産に注力してきた。

 同社の運用資産約40兆円からすると不動産は約2%程度と中核の資産ではないが、前述のように長期・安定的な形で賃料収入が得られること、長期で見ればインフレによる資産価値の目減りを回避できるというメリットを見ている。

 また、明治安田が推進している「2『大』プロジェクト」の1つである「地元の元気プロジェクト」で目指している地域活性化においても不動産の役割は大きい。

 25年竣工予定の「明治安田生命新宿ビル」などは、官民が連携して進めている西新宿再開発において重要な位置を占めるプロジェクトになっている。

 明治安田は新宿の他、名古屋、福岡、広島、金沢に保有するビルの再開発も進めているが、この各地に保有するビルを活用したプロジェクトが23年6月からスタートした。それが「明治安田ヴィレッジ構想」。

 東京・丸の内の本社ビルを始めとした全国各地の主要ビルを活用して、地元の人々と、明治安田のブランド資産とをつなぐ空間として展開していく構想。

 丸の内では22年10月に「静嘉堂文庫美術館」が移転しており、多くの来館者で賑わう他、「明治安田ホール」を活用してお笑いや落語のイベントなど、様々なイベントを展開して人が集まる場所にしていく。

 さらに23年6月にはサッカー・Jリーグの本社が文京区から移転。明治安田は15年からJ1、J2、J3の冠スポンサーを務めているが、本社移転によりさらに双方のコミュニケーションや情報交換の機会が増えることから、これまで以上に連携した取り組みを進めていく方針。

 7月8日から23日には、丸の内仲通り、丸の内本社ビルが一体となったイベントをJリーグと共同で開催した。

 この「ヴィレッジ構想」について永島氏は「企業のありよう、パーパス、社会契約をご理解、共感いただくため、個々の営業職員がお客様の前で『明治安田フィロソフィー』を体現できることはもちろん大切だが、それとともにブランドを創出することも大切。Jリーグとのご縁も10年目に入るが、そもそも社名露出のためだけでなく、『100年構想』のような地域貢献に向けたありように共感したから、ここまで続いている。そうした当社のありようをヴィレッジ発で広めていきたい」と話す。

 明治安田のビルには丸の内の他、再開発中の新宿、福岡、名古屋などにもホールがあった。各地のホールとも地元の人々に親しまれてきたが、「ビルを建て替える際に、経済的な効率性だけを考えたら、ホールを取り壊してテナント誘致をした方が利益は上がるが、あえてホールを残して、そこでいろいろなイベントを開催することで、地域の絆が広がる一つの場所、ヴィレッジとして、地元の方々に愛していただけるのではないか」としてホールを設置する。

 不動産は経済的価値という面だけを見ても、超長期の契約となる生命保険事業との相性がよく、前述のように運用資産としても合理的だと見る。そこに人々の「居場所」や「集う場所」という「社会的価値」も加えていきたいというのが、この「ヴィレッジ構想」の考え方。

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