2023-07-13

【社名変更の日本工営】ID&Eホールディングス・新屋浩明社長の「まちづくり」構想力

新屋浩明・ID&Eホールディングス社長



海外での経験を〝逆輸入〟

 日本工営はこの経験値を実は海外で積み重ねてきた。新屋氏は「創業以来、当社は水資源開発・電源開発に始まり、結果的にまちづくりに貢献する事業を担ってきた」と繰り返す。

 大正末期、創業者である久保田豊氏は当時世界最大級のダム「水豊発電所」をはじめとする数々の朝鮮半島の電源開発の指揮・監督にあたった。このとき久保田氏は単なるダム建設に留まらず、建設に従事する人々が建設現場に通い、建設に必要な材料を運ぶための道路や鉄道を整備した。そのことによりダム完成後の下流域に産業立地が進み、まちづくりにもつながった。

 その後、日本工営を創業し、戦後焼け野原になった日本の国土の復興に尽力した久保田氏だが、その想いは再び海外に向く。54年に海外進出第1号としてビルマ(現ミャンマー)の発電プロジェクトを手掛けたのだ。それが現在の日本工営のグローバル化へとつながる。今では世界160の国と地域での実績を持つ。

「日本の法規制などで難しい取り組みは海外で実践し、そこで経験を積んできた。結果として当社は社会課題に対して新たなソリューションを創出する企業グループになっている」(同)。要は海外で培った経験やノウハウを日本に〝逆輸入〟しているのだ。

 今年4月には「ウクライナ復興支援室」を新設。現在は破壊された都市基盤の本格的な復旧・復興に向けた基本計画を策定する業務を実施し、ウクライナの復旧・復興支援につなげていく考えだ。

 そして日本工営は7月3日に持株会社「ID&Eホールディングス」を発足させた。HD化は2年前に新屋氏が社長就任時に宣言した取り組みだ。「土木・建築・エネルギーなどのノウハウを融合させ、より複雑化した社会課題を解決できるようにしたい」と狙いを話す。

 一方で国内の建設コンサル業界は約500社がひしめき合う業界。トップの日本工営のシェアは1割ほど。「世界規模で見れば30位前後であり、更なる成長が必要」と新屋氏。「志を同じくする企業と共創し、企業価値を高めていきたい」と語る。

 ますます複雑化する世の中で、複合的な課題を一挙に解決する包括的なまちづくりの提案が建設コンサルに求められている。

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