2023-06-13

【政界】G7広島で期待以上の成果を上げた岸田首相が解散に慎重な真意

イラスト・山田紳



及び腰の立憲

 G7サミットで露呈した課題がゼレンスキーの来日で後景に退いたためか、国内世論は岸田の手腕をおおむね好意的に評価した。

 読売新聞が5月20、21両日に実施した世論調査で、内閣支持率は56%に上昇し、8カ月ぶりに5割台を回復した。不支持率は33%だった。他社に比べて支持率が低めに出る傾向がある毎日新聞の調査(20、21両日)でも支持率は45%、不支持率は46%でほぼ並んだ。サミット効果はあったとみていいだろう。

 しかも、サミットから一夜明けた22日には東京株式市場の日経平均株価がバブル経済崩壊後の最高値を更新した。「ここで解散しないで、いつするんだ」(自民党幹部)と早期解散論が高まったのは無理もない。

「たびたび聞かれるが、重大な政治課題について結果を出すことに専念している。今は解散については考えていない」。同じ日、首相官邸で記者団から解散に関する見解を問われた岸田は判で押したように繰り返した。本心はわからないが、岸田に早期解散のメリットはあるだろうか。

 ポイントは今後の支持率の推移だ。早期解散論は、支持率は今がピークという前提に立っている。しかし、国会が閉会すれば野党は政権追及の場を失う。昨年夏の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題のようなスキャンダルさえなければ、秋ごろまで支持率は大きく変動しないのではないか。

 内閣不信任決議案は岸田が解散に踏み切る動機になる。自民党総務会長の遠藤利明は「不信任案が出されれば、国民に信を問うことはある」と野党を挑発した。一方、立憲民主党代表の泉健太は「今、何か言及するものではない」と煮え切らない。4月の統一地方選で伸び悩み、日本維新の会に野党第1党の座を脅かされる現状では、衆院選で党勢を回復させるのは至難の業だからだ。

 不信任案が出なくても今国会で解散に踏み切る場合、岸田はそれなりの覚悟がいる。衆院議員の任期はまだ折り返し地点に達しておらず、解散の大義がない。来年9月の自民党総裁選から逆算した「自己都合解散」と有権者に見透かされたら、万全のタイミングから一転、政権に逆風が吹きかねない。

 読売新聞の世論調査では、衆院選の時期について「再来年秋の任期満了まで行う必要はない」が43%で最多だった。「できるだけ早く行う」は11%にとどまり、サミットへの評価と解散は結び付いていないことがうかがえる。

 岸田は5月17日、政府の「こども未来戦略会議」で、子育て支援の加速に必要な政策・予算・財源を検討し、6月に策定する「骨太の方針」に反映させるよう指示した。「次元の異なる少子化対策」は防衛力強化と並ぶ重要テーマだ。有権者は、岸田政権がそうした課題に本気で取り組むか、目を凝らしている段階ではないか。

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