2023-06-13

【政界】G7広島で期待以上の成果を上げた岸田首相が解散に慎重な真意

イラスト・山田紳



新興国は両にらみ

 G7首脳とゼレンスキーによる最終日のセッションでは、各国がウクライナに対して外交、財政、人道、軍事支援を必要な限り提供することで一致した。岸田は「ロシアによる侵略を1日も早く終わらせるためには、G7がこれまで以上に結束し、ウクライナをあらゆる側面から力強く支援するとともに、厳しい対露制裁を継続することが不可欠だ」と表明した。ゼレンスキーは招待8カ国を加えた拡大会合にも出席し、予定の1時間を超えて議論が交わされた。

 閉幕後の記者会見で岸田は「ここ広島にゼレンスキー大統領をお迎えし、議論を行ったことは、力による現状変更のための核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならないというメッセージを、緊張感を持って発信することになった」と強調し、ことあるごとに核の使用を示唆するロシアをけん制した。

 ロシアへの圧力を強化するには、G7だけでなく「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国の協力が必要だ。ただ、今回その道筋がついたとは言い難い。

 サミットに招待した8カ国のうち、韓国とオーストラリアを除く6カ国はグローバルサウスに属する。中でも代表格のインドは、国境紛争を抱える中国に対抗するため日米欧との連携を強化する半面、ロシアと長年の友好関係を維持している。中露を含む主要20カ国・地域(G20)の今年の議長国でもある。

 モディ首相はサミット前、日経新聞との単独会見で「インドは安全保障上のパートナーシップや同盟に属したことはない」と語った。自国の利益に応じて相手と連携する「戦略的自律性」を重視するインドは、G7と中露のいずれかに一方的に肩入れする気はない。同様にインドネシアとブラジルも拡大会合で二極化への懸念を示した。ウクライナ問題を巡ってG7とグローバルサウスにはなお温度差がある。

 初日の世界経済に関するセッションで、G7首脳はクリーンエネルギー経済への移行に向けた取り組みや、特定の国への重要物資の依存の低減、信頼性のあるサプライチェーン(供給網)の構築などで緊密に連携することを確認した。

 しかし、G7が世界の国内総生産(GDP)に占める割合はかつての約7割から今や約4割まで低下している。世界第2位の経済大国・中国と全面対決するわけにはいかない。首脳声明でデカップリング(切り離し)を否定し、「中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある」とうたったのはそのためだ。

 米政府の債務上限引き上げ問題もサミットに影を落とした。バイデンは交渉状況を確認するため5月19日の夕食会を途中で退席。20日午前のセッションも欠席した。

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