2023-06-09

パナソニック再生の道筋をつけた今、社長・楠見雄規に問われる「収益力」

楠見雄規・パナソニック ホールディングス社長グループCEO

車載電池がプラズマ・液晶の二の舞になる懸念はないか?



「この2年間は誰にも負けない競争力の獲得を目指してきた。今後、人手不足や物価の高騰、地政学リスクに起因するサプライチェーン(供給網)の分断など、これまで以上に企業を取り巻く環境は急激に変化していくことが予想されるが、それでも手綱を緩めることなく競争力を徹底して強化していく」

 こう語るのは、パナソニック ホールディングス(HD)社長グループCEO(最高経営責任者)の楠見雄規氏。

 2021年に社長へ就任し、自ら「競争力強化の2年」と位置付けた2年間が経った今、楠見氏は「成長ステージへ、ギアを上げる」と宣言。新たなグループ戦略を発表した。

 具体的な今後の投資領域として、車載電池、空質空調、サプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェアの3つを設定。中でも、重点領域に据えるのが車載電池。グループ全体で24年度までの3年で1兆8千億円を投資するうち、6千億円を車載電池に投じる計画だ。

 これまでも米電気自動車(EV)メーカー・テスラ向けに車載電池を生産してきたパナソニックHD。同社では世界的な脱炭素の流れを受けて、EV市場がグローバルで拡大すると判断。現在は米国政府が米国内のサプライチェーン構築を支援していることもあり、2030年までの10年間に北米市場では年平均35%の成長を見込んでいる。

 すでに稼働している米ネバダ工場に続き、昨年10月にはカンザス州にも新工場の建設を決定。前述した戦略投資の6千億円のほとんどをカンザス工場に投じる考えで、24年度中の量産開始を目指している。

 この他、24年には国内の大阪・住之江に車載電池の生産技術開発拠点、25年には同・門真に新機種・材料の開発拠点を新設。2030年までに和歌山工場を含めて、グローバルでの生産体制を200ギガ(ギガは10億)ワット時、現在の約4倍の生産能力に引き上げる計画だ。

 ただ、パナソニックはかつてプラズマや液晶パネルに巨額投資をして、後に2期連続で7千億円超の最終赤字に陥った過去がある。車載電池がプラズマ・液晶の二の舞になる懸念はないのだろうか。

 楠見氏は「ディスプレイパネルは、ガラスのサイズをどんどん大きくしていかなければならない。そこに投資が発生し、以前のものが使えなくなってしまう。しかし、半導体や液晶パネルの世界と違って、電池は別の工場を建てる必要もないし、とにかくシェアを取らないといけないわけでもない」と指摘。

 あくまで高容量化やレアメタルの少なさ、安全性などの技術優位性で差が出るとし、「きちんとお客さんを取りに行って、そのお客さんにしっかりお役立ちをしていけば、シェアだけでコスト競争力がなくなるかといえば、そういうことでもない。技術で勝っていく」と語る。


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