2023-05-08

中前忠氏の警鐘「金利上昇で起きる危機は止められない。起きた事象にどう対応するかが各国に問われている」

中前忠・中前国際経済研究所代表



今回の危機は起きるべくして起きた?

 ─ 金融は、ある意味でこういうことを繰り返していくと。

 中前 ええ。金融に加えて、今回はハイテク産業です。経済成長の主役となる産業と、金融、不動産は常に密接に結びついています。今回はハイテク産業、それに伴う不動産、金融という3つのバブルが同時に崩壊してきています。米国の地価で最も下がっているのは、都市別でいうとサンフランシスコです。いわばシリコンバレー不況です。

 商業不動産でも、新ビルが満床になったのは、ハイテク企業がどんどん入居したからですが、それがどんどん出て行くようになる。レイオフを見ても、ハイテク企業が最も激しくなっています。

 これまでのハイテクブームと、ハイテク企業を受け入れる不動産ブームを支えたのが金融です。その意味で、SVBが破綻したのは象徴的です。

 ─ 今回の危機は起きるべくして起きたということですね。ただ、米国経済が落ち込むと世界同時不況に陥りかねません。

 中前 ええ。米国以外の国は、米国がバブルで、どんどん輸入をしてくれたから成り立っていた面が大きい。

 ─ 米国の貿易赤字が他国を支えた。しかし今、米国の赤字が急速に縮小していますね。

 中前 米国全体でピーク時から4割、対中国の赤字は半分になっています。この傾向は今後、さらに強まってきます。

 欧米で起きている問題とは別に中国問題があります。中国も米国への輸出が落ちますが、同時に中国独自のバブル、不動産バブルの崩壊で、中国自身が表で言っているよりも、実態はさらに状況は悪くなっています。

 ─ 日本はどう考えていけばいいと思いますか。

 中前 日本も例外ではありません。タイミングとしては、日本は遅れていますが、日本の状況が悪化するだろうというのは、貿易赤字がどんどん大きくなっていることからもわかります。

 特に1990年代から対外投資をやり過ぎて、日本から輸出をしなくなっていた。輸入は経済成長とともに増加するわけですから、経済成長に伴って貿易赤字が増えるという話です。

 これは量的に見た話ですが、最近の問題は金額的に見れば円安になって輸入価格が上昇して、赤字がさらに増えていくという問題があります。したがって円安政策をやめて円高にしなければいけないということになります。

 ─ 足元で1ドル=130円台、一時は150円まで行きましたが、どの水準までの円高を見通しますか。

 中前 少なくとも100円以上の円高になる方向に向かわなければ問題だと思います。

 ─ ファンダメンタルズ(経済の基礎的指標)的に、日本にその実力がある?

 中前 相当努力しなければいけないでしょう。放っておけば、むしろ円安に向かってしまうことになります。(続く)

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