金利上昇による混乱にどう対応できるかが勝負
─ この流動性危機は、今後どういう事態を招くと。
中前 このまま行くと、中央銀行がある程度助けても、銀行としては資金繰りなど様々な問題を考えると、貸出を抑制せざるを得なくなります。その意味で、景気は、私はすでに不況に入っていると見ていますが、それがさらに早まってきます。
そうすると、銀行は、金利が上昇したことで保有債券が値下がりして含み損が出ていることに加えて、不良債権がどんどん増加していきます。それがまた問題を引き起こすことになります。
その意味で、本当は打つ手はないのです。何が原因かというと、あまりにも長期に、野放図に金融を緩め過ぎたことです。これをやれば、どこかでインフレになるわけですから、必ず今のような問題が起きることはわかっていたわけです。それを見ないようにしてきたのが、今の通貨当局ではないでしょうか。
今回の一番の問題は、2021年に当時のインフレを「一時的だ」として無視したことです。ところがさらにインフレが加速したことで、慌てて利上げを急いだ。結果的に問題が早く出てきました。
─ 中央銀行の問題ということになりますね。状況を打開する道はありますか。
中前 基本的にはありません。結局、市場の力で金利が上がり、大混乱が起きますが、それにうまく対応できるかが勝負だと思います。
これは個別銀行の問題ではなく国の問題です。政策には崩壊現象を食い止める手段も力もありませんから、問題は起こるべくして起きます。
元々「ゼロ金利」は市場を潰す政策でしたから、その観点で言えば金利が上がるのはいいことなのですが、ただ金利が、例えば日本で0%程度だったものが一気に3%、5%になると、それで潰れる企業や、住宅ローンを抱えている個人にも悪影響が出ます。そうすると、そこに貸している銀行がまた傷むという問題になります。
ですから、起きたダメージに対してどう対応するかというのが重要で、問題を起きなくさせるということを考えるのは、もう無意味だというのが私の見方です。
─ 危機が起きることを前提に動く必要があると。
中前 ええ。これから現実に、企業倒産、銀行も潰れることになるでしょうし、個人の破産なども増えるでしょう。それをどう処理し、どうやって将来の日本の経済成長にとってプラスになるように持っていくかが問われます。