2023-04-11

「米国株は波乱相場、下落が続く。日本は30年続くデフレを脱却できるかが問われる」スガシタパートナーズ・菅下清廣

菅下清廣・スガシタパートナーズ社長




円安は「脱デフレ」につながるのか

 ─ 日本への悪影響の波及も懸念されますが。

 菅下 金融市場の動揺という点では日本への影響は少ないと見ます。一部、経営基盤が脆弱な地方銀行への影響が出る恐れがありますが、日本の金融秩序全体には問題はないでしょう。

 ただ、本来であれば、米国の動揺につられて株価を下げる必要はないわけですが、連動して日本の株価も下落しています。

 株式市場は、長期的にはファンダメンタルズ(経済の基礎的指標)で動きますが、短期的には人間の「心理」で動きます。個人投資家は目の前に出ている「SVB破綻」、「クレディ・スイス経営危機」という情報で不安を抱いていますし、米国のインフレ、それを抑えるための金融引き締めも続きそうだということで、それに伴うリスクを懸念しています。

 ですから、新しい買い手が出て来ず、弱気の個人投資家、企業が売りに出たことで、日米の株価が下落したのです。

 ─ 今後の株式市場の動きをどう見ていますか。

 菅下 米国株は先程お話しましたように、歴史的な天井を打った後の下落、調整局面が続きます。しかし日本は、30年以上続いたデフレを脱却しインフレに向かおうとしている最中です。

 日本も歴史のサイクルで見ていく必要があります。日本では戦後5回の大相場がありました。我々の記憶に残る1989年12月の日経平均の最高値3万8915円を付けたのが5回目ですが、5.6倍になりました。

 この大相場ではほとんどが出発点から5倍以上になっています。4回目は例外で、途中にオイルショックが起きたことで景気が腰折れし、出発点から2.39倍の上昇にとどまりました。

 今回の相場は08年のリーマンショックを織り込んだ安値、09年3月の7054円からスタートしました。3倍ならば約2万1000円、4倍で約2万8000円ですが、これはすでに超えましたから今後、5倍の3万5000円を目指す展開となっています。

 ─ 問題は、この3万5000円をいつ付けるかですが。

 菅下 ええ。価格、時間の「波動」とも将棋や囲碁と同じように「定石」がありますが、上げ幅の半値戻しというのが攻防の分岐点となります。「半値戻しは全値戻し」という相場の格言がありますが、半値戻しの壁を突破したら、以前の高値を取りに来るというのが相場の波動です。

 その意味で、今の日経平均は半値戻しの壁、約2万3000円を突破しています。相場の波動から見ると、まず当面は3万5000円を目標とし、2、3年内にはバブルの天井、3万8915円を付けるというのが相場観となります。

 ─ ただ、足元で日経平均が上がる材料が見えにくいというのが正直なところです。

 菅下 株価が上がる材料は、まず円安です。22年10月には32年ぶりに1ドル=150円台を付けましたが、この円安で「脱デフレ」の可能性が出てきたんです。

 4月交代の日本銀行総裁の黒田東彦氏は23年1月の「ダボス会議」で、10年かけて物価目標2%を達成できなかったことが心残りだという趣旨の講演をしていましたが、32年ぶりの円安という神風がやってきました。

 円安では輸入インフレで物価が上がります。この物価上昇で多くの人が円安に対して不満の声を上げていますが、日本は物価目標2%を目標にしており、物価を上げたがっている国です。マイナス金利が続く限りはデフレを脱却できませんから。

 ─ 円安によってデフレを脱却する可能性が出ている?

 菅下 そうです。ですから、金融緩和は当面継続する必要があります。日銀新総裁の植田和男氏は、黒田氏の目標を引き継いで、まずは1年以上、物価目標2%に向けた金融政策を実行するものと思います。

 23年1―3月期が日本の景気と株価の底となり、4月以降は新しい上昇波動が株式市場で始まるだろうと見ています。

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