2022-07-21

【水素、医薬でも注目】千代田化工会長兼社長・榊田雅和はいかに新領域を開拓するか?

榊田雅和・千代田化工建設会長兼社長



再生計画以降の赤字案件はゼロに


 この「リスク管理」は千代田化工にとって重要な課題。同社は米国で受注したLNGプラント建設の遅延によって、2019年3月期決算で2149億円の最終赤字に転落、債務超過に陥った。それに伴い、8月1日付で東証1部から2部に降格。

 その千代田化工に対して、約33%を保有する筆頭株主である三菱商事が1600億円を投融資、三菱UFJ銀行が200億円の劣後ローンの融資で支援したことで債務超過を解消した。その後、社長、会長や役員など要職を三菱商事出身者が務めており、榊田氏もその1人。

 再生にあたって、リスク管理を担う部署として、「戦略・リスク統合本部」を設置、本部長は三菱商事出身の長谷川文則氏が務めている。この部署を中心に、プロジェクト遂行の過程におけるリスクを見ている。

 それ以前の千代田化工は、それぞれのプロジェクトのプロジェクトマネージャーの「職人芸」のような経験にリスク管理を委ねていた面がある。それを全社的に進める形に変えた。

「このやり方が全社員に徹底されてきた。リスク管理をしっかりしてこそ、いい案件となり安定収益が上がってくるという意識が浸透してきている」

 これは実績が出ていることが大きい。千代田化工が再生計画をスタートして以降に受注、建設している案件で赤字は1件も出ていない。さらに今は、受注以降だけでなく、見積もりや事業可能性の検証(FS)段階からのリスク予兆から、引き渡した後の補修まで、プロジェクトのライフサイクル全体を見たリスク管理を進める。

 ただ、22年3月期決算は経常利益、営業利益段階では黒字を確保していたが、過去に日揮ホールディングスとともに受注していた豪州の案件における米企業との和解に関連して特別損失を計上したことで最終赤字に。

 これによって榊田氏ら経営陣は一律、報酬をカットした他、夏の賞与は経営陣、社員含めてゼロとなった。改めて全社的にリスク管理の重要性を痛感することとなった。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事