2022-06-20

【政界】自信を付け始める岸田首相 財政再建で元首相が神経を尖らせる場面も…

イラスト・山田紳



風向き急変の過去も

 岸田政権に今のところ大きな懸念材料はない。参院選前に補正予算を編成すると与党に不利になるというジンクスにかまわず、岸田が公明党の要望を受け入れて22年度補正予算案を今国会に提出したのも、野党の力量を見極めてのことだろう。

 ただ、第1次安倍政権時代の07年は「消えた年金」問題や閣僚の相次ぐ不祥事で国会終盤に風向きが変わり、自民党は参院選で惨敗した。1998年参院選では、当時首相だった橋本龍太郎の「恒久減税」を巡る発言がぶれ、事前の予測で優位とみられた同党が敗北。橋本は選挙後に退陣した。

 政界は何が起こるかわからない。麻生は5月中旬の麻生派の会合で「参院選がある通常国会の会期末としてはベタなぎのように見えるが、最後の詰めが一番だ」と引き締めた。

 参院選で自民党が勝てば、25年まで大型の国政選挙の予定がなく、岸田は長期政権が視野に入ってくる。新型コロナ対策は言うに及ばず、「新しい資本主義」の肉付けや、インド太平洋地域への米国の関与と歩調を合わせた防衛力強化、憲法改正など日本の将来に関わる課題に対し、岸田がどうリーダーシップを発揮するかが問われる。今までのように「聞く力」一辺倒というわけにはいかない。

 そのカギを握るのが選挙後の内閣改造と自民党役員人事だ。党内では、岸田が安倍に配慮して政調会長に起用したものの、実質的な政策決定権を与えていない高市早苗の交代論がささやかれている。最大派閥の安倍派には政権発足時に幹事長ポストを握れなかった不満がくすぶる。岸田を支える各派のバランスが崩れたら、政権の足元はたちまち揺らぐ。

 参院選を乗り切ったとしても、25年までの3年間が岸田にとって「黄金」になるとは言えないだけに、岸田の緊張感は続く。(敬称略)

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