2022-06-20

【政界】自信を付け始める岸田首相 財政再建で元首相が神経を尖らせる場面も…

イラスト・山田紳



勢いは本物か

 山形選挙区を含む全国32の「1人区」(改選数1)の行方は参院選全体の勝敗を左右してきた。16年と19年は共産党を含む野党が全選挙区で候補者を一本化して自民党に挑んだが、結果はそれぞれ11勝、10勝と大きく負け越し、当時の安倍政権は揺るがなかった。

 しかも、昨年の衆院選では野党共闘を主導した立憲民主党が議席を減らし、国民民主党は早々とこの枠組みから離脱。両党を支援してきた連合は、参院選に向けて共産党との決別を迫った。立憲民主、共産両党は5月9日、「勝利する可能性の高い選挙区を優先して候補者調整する」ことで妥協した。

 その結果、野党の協力が今回も何らかの形で続く1人区は11選挙区(5月24日現在)にとどまる。今後、情勢が大きく変化しない限り、野党は過去2回以上に苦戦する可能性が高い。

 元気がない野党の中で自民党が警戒するのが日本維新の会だ。維新は昨年の衆院選で公示前の11議席から41議席に躍進した勢いに乗り、次期衆院選で野党第1党の座を狙う。参院選と来年春の統一地方選は足場を固める重要な意味を持つ。

 参院選の目標は改選6議席から倍増の12議席。地盤の大阪から外に支持を広げようと比例代表に複数のタレント候補を擁立し、全国的な票の掘り起こしを図る。

 安倍、菅両政権は維新と良好な関係を保ってきた。安倍や官房長官時代の菅義偉には、維新代表の松井一郎(大阪市長)を通じて同党の協力を取り付け、国会で憲法改正論議を進める思惑があったからだ。一方、岸田政権にはそうしたパイプがなく、維新は参院選を前に野党色を強めている。

 自民党幹事長の茂木は5月、大阪市での街頭演説で「維新の創設者(元大阪市長の橋下徹)がロシア寄りの発言を繰り返しているのに、維新の国会議員は何も言えない。身内に甘い政党だ」と維新を批判した。「維新に昨年の衆院選ほどの勢いはない」とみて攻勢に出たのだ。これに対し、松井は「幹事長としては薄っぺらい」とすぐさま反論した。

 維新は参院選の公約として、看板の統治機構改革などに加え、自衛隊を憲法に明記する9条改正や防衛費増額などを掲げる構え。自民党の主張と重なるのは、「全国政党」に脱皮するには保守層への浸透が不可欠と考えているからだろう。

 世論調査によっては、参院選比例代表の投票先として維新が立憲民主党を上回っているケースもある。選挙に詳しい自民党関係者は「維新が議席を伸ばすのは間違いない」と分析する。

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