2021-12-10

【政界】国会で憲法改正論議に進展の機運 岸田首相に立ちはだかる公明党の壁

イラスト・山田紳



「推進」から「実現」へ

 もう一つ注目すべきは憲法改正だ。維新、国民両党の幹事長・国対委員長会談では、衆参両院の憲法審査会を毎週開催するよう与党に求めることでも一致した。

 野党は長く「安倍政権下での憲法改正は認めない」と抵抗し、改憲手続きに関する改正国民投票法は今年の通常国会で、9国会目でようやく成立した。しかし、国民民主党が改憲に前向きな姿勢に転じたことで、改憲勢力は衆参両院とも「3分の2」を超え、改憲案を国民投票にかける下地はできた。

 維新代表の松井は衆院選直後の11月2日の記者会見で「来年の参院選までに改正案を固めて、参院選と一緒に(国民投票を)実施すべきだ」と議論の活性化を促した。維新は教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置という3項目の改憲を掲げている。

 自民党でも維新に呼応する動きが出てきた。憲法改正推進本部を憲法改正実現本部に改称し、本部長に元国家公安委員長の古屋圭司を起用した。本部は総裁直轄機関であり、首相の岸田文雄がやる気を示したと受け止められている。

 改称には裏の狙いもあった。憲法改正推進本部長だった衛藤征士郎外しだ。当選13回の大ベテランがなぜ? 自民党の閣僚経験者は解説する。「衛藤さんは本部長として言動に独断専行が目立ち、公明党や野党の反発を招いていた。改憲論議を進めるには誰かが鈴を付けなければならなかった」。

 改憲を重視しなかった菅前政権ならともかく、今後は衛藤のままではだめだと見限られたようだ。本部長交代は衛藤にとって寝耳に水だったという。

 自民党は安倍政権時代の18年に①第9条への自衛隊明記②緊急事態対応③参院選の合区解消④教育の充実――に関して改憲の条文イメージをまとめている。岸田は11月19日の報道機関のインタビューに「4項目とも必要な改正で、それぞれしっかりと国会でも議論してもらいたい。ただ、結果としてその中の一部が進むなら、4項目同時にこだわるものではない」と答えた。他党との合意を優先するという意味だ。

 幹事長の茂木敏充は、20年以降の新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて「これまで自然災害を想定していた緊急事態には感染症を含めてさまざまなものが考えられる」と述べ、緊急事態条項の議論を優先すべきだとの認識を示している。

 公明党は難しい立場に追い込まれつつある。参院選前に改憲論議が進むのは避けたいのが本音で、緊急事態条項についても「国民の自由に対する制約は個別法に書くしかない。憲法にそういう規定を設けたらすべて解決するというのは誤解だ」(副代表の北側一雄)と慎重姿勢を崩していない。

 しかし、自民党が維新、国民両党の側に寄ったときに、果たして今の立ち位置を保てるかどうか。自民党幹部は「維新が議論をリードし、うちと、その後に公明党がついていく展開になる」とにらんでいる。

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