2021-12-10

【政界】国会で憲法改正論議に進展の機運 岸田首相に立ちはだかる公明党の壁

イラスト・山田紳



もう「ゆ党」ではない

 地域政党「大阪維新の会」を母体に地元大阪で圧倒的な強さを誇る維新は「全国政党化」が長年の懸案だ。今回、小選挙区で得た16議席のうち15議席は大阪府、1議席は兵庫県。兵庫6区は維新が大阪以外で初めて勝った小選挙区だ。首都圏で勝ち抜くにはまだ地力が足りない。

 一方、比例代表では全国で803万票を集め、709万票の公明党をしのいで「第3党」に躍り出た。その結果、北海道を除く10ブロックで議席を獲得。全国展開の足場を築いたと言っていい。

 看板政策の大阪都構想を巡る住民投票で2回つまずきながらも、吉村、松井のツートップで大阪府政と大阪市政を運営してきた維新は政権担当能力を有権者から認知されつつある。そこが立憲民主党との大きな違いだ。衆院選で立憲、共産など野党5党の共闘を是としなかった政権批判票は維新に流れ込んだ。

 維新の台頭は野党の枠組みにも変化をもたらす。共産党との選挙協力でもともと立憲と温度差があった国民民主党は、衆院選後に早速、維新に接近。11月9日に両党の幹事長、国会対策委員長が会談し、国会で連携していくことで合意した。

 両党は衆院で計52議席を占め、予算措置を伴う法案を提出可能になる。共同記者会見で維新幹事長(現共同代表)の馬場伸幸は「与野党もたれ合いの国会を大改革していく。両党で合意できる法案を共同提出する」と意欲を示した。

 自民党の安倍晋三、菅義偉両首相経験者との近さから「ゆ党」「与党の補完勢力」と揶揄されることもあった維新だが、勢力拡大に伴い「第三極」路線にかじを切り始めた。それは次の参院選を見据えた戦術にほかならない。

 維新、国民両党は臨時国会でまず、国会議員の歳費を2割削減する法案と、揮発油税などの一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除法案を提出する方針だ。

 トリガー条項とは、ガソリンの全国平均小売価格が3カ月連続で1㍑当たり160円を超えた場合、揮発油税の上乗せ分25・1円の課税を停止し、価格を引き下げる措置だ。旧民主党政権が導入した後、東日本大震災の復興財源を確保するため現在は凍結されている。

 ガソリン価格高騰対策は政府の喫緊の課題だ。しかし、トリガー条項の凍結解除について官房長官の松野博一は「発動された場合、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱、国、地方の財政への多大な影響などの問題があり、凍結解除は適当ではない」と一蹴。政府・与党内に解除賛成論は皆無で、維新、国民両党が法案を出しても成立の見込みはない。

 ただ、ガソリン価格は国民生活に直結する。政府が打ち出した石油元売り業者への補助金支出は専門家の評価が分かれているだけに、両党が凍結解除法案をうまくアピールすれば、世論を味方につけることができるかもしれない。

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