2021-10-18

【京都・第一工業製薬】界面活性剤メーカーから工業用薬剤の国内トップ企業へ成長

坂本 隆司・第一工業製薬会長兼社長



 ―― 花王は1887年の創業ですね。

 坂本 そこから100年以上経って、花王さんの売上高は1兆3820億円(2020年12月期)、当社は591億円(2021年3月期)。だから、業績ではこれだけの差がついてしまったんですが、それでも、合成洗剤をつくったのは当社の方が早かったということです。

 何が言いたいかというと、この間、わたしどもは残念ながら価格競争の中で競争力を失っていった。いわゆる、今で言うコモディティ化の波についていけなくなり、生き残ることができなくなった。それでBtoC(消費者向け取引)を放棄し、BtoB(企業間取引)に特化することになったのです。

 ―― 会社としては大きな決断ですね。これはいつ頃の話ですか。

 坂本 1973年です。ここから家庭用製品の販売をやめて、界面活性剤の技術をベースにした工業用製品に特化していくようになりました。

 そうして現在の中間材料屋となっていくのですが、これが“第2の創業”です。

 ―― 家庭用製品から工業用製品へとシフトしていったと。

 坂本 そうです。当社は、この時から表に出るような家庭用製品ではなく、縁の下の力持ちである工業用製品に特化していったのです。

 わたしは富士銀行(現みずほ銀行)の出身で、当社に入社したのが2001年でした。当時は赤字転落に無配で、一時はかなり苦しい時期もありました。

 この辺の話は、後ほどお話ししたいと思いますが、それでも地道に社員一同頑張りまして、2007年の夏でしたかね。『会社四季報』で当社の紹介が「界面活性剤の老舗」から「工業用薬剤の首位」という表現に替わったんです。

 ―― これは嬉しかったでしょうね。

 坂本 ええ。なかなか当社くらいの事業規模で首位なんて書いてもらえませんから、素直に嬉しかったですよ。

 その後、わたしは2013年に会長となり、社長を兼任するようになったのが2015年なんですが、この時、わたしは「これまでは工業用薬剤でずっと来たが、これからの時代を見据えて健康食品やライフサイエンスの分野に入るぞ」と宣言しました。

 これが“第3の創業”でして、現在は界面活性剤からウレタン材料、アメニティ材料、パソコンやスマートフォンに使われる機能材料や電子デバイス材料まで、人間生活に関わるあらゆる材料をつくっている。そういう会社でございます。

 ―― なるほど。界面活性剤をベースにビジネス領域を広げてきたということですね。

坂本 ただ、最近になって思うのは、工業用薬剤の首位というのは、商品の数が多いということなんです。ですから、逆に言うと非効率でもあるんですよね。だから、この辺は冷静に見ておく必要があると思います。

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