2024-04-18

「人はつながる動機を求めている!」MIXI・木村弘毅の事業ポートフォリオ変革論

木村弘毅・MIXI社長CEO



苦境期に開始したゲームが屋台骨を支える事業へ成長



 MIXIは、創業者(現・取締役ファウンダー)の笠原健治氏が、東京大学在学中の1997年に求人情報サイトの運営を手掛けたのが始まり。2年後の1999年に法人化、2004年にSNS(ソーシャル・ネットワーキング サービス=交流サイト)『mixi』を立ち上げ、06年に東京証券取引所マザーズ市場(現プライム)へ上場。一時は日本発のSNSとして絶対的な地位を築いた。

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 ただ、パソコンやガラケー(従来型の携帯電話)を中心に広がった同社だったが、時代は徐々にスマートフォンへ移行。

 2010年頃から、米フェイスブック(現メタ)や米ツイッター(現X)、韓国からLINEが続々日本へ上陸。徐々に『mixi』の人気に陰りが出始め、業績が悪化。13年度(14年3月期)には上場以来、初の最終赤字へ転落してしまった。

「SNSで大きく成長し、上場も果たし、プラットフォーマーとして大きく成長していきたいと思った矢先に、外国のSNSが入ってきて、自分たちが窮地に立たされた。そうした中で、わたしたちが存在するレゾンデートル(存在意義)とは何なんだ? ということを考え、原点に立ち返った」(木村氏)

 この苦境期に誕生したのが、スマホゲームアプリ『モンスターストライク(以下、モンスト)』。当時はゲーム以外のアプリも開発していたが、ヒットに恵まれない日々。ところが、わずか3~4人から始まった小さなプロジェクトで、たった9カ月でつくったゲームが大ヒット。このプロジェクトの中心人物が木村氏だった。

 2013年10月にサービスを開始。当時のスマホゲームでは珍しく、最大4人まで同時に遊べる協力プレイが話題となり、多くのユーザーから支持を得ることができた。これにより、同社の業績はV字回復。昨年6月には世界累計利用者数が6千万人を突破した。

 2024年3月期は売上高1460億円、営業利益180億円の見通し。『モンスト』を含む、デジタルエンターテインメント事業は売上の約7割を占め、同社の屋台骨を支える事業へと成長している。

「やはり、われわれの原点はコミュニケーションだろうと。家族や仲間、友達とのコミュニケーションを図ることにフォーカスしていけば、必ず立ち直るだろうと考えた。結果的に世界中のスマートフォンに入っているアプリケーションの売上で2015年に初めてナンバーワンになることができ、心の中でガッツポーズした(笑)」(木村氏)

 その後、2015年には子供の写真・動画共有アプリ『家族アルバム みてね』を開発。家族と一緒に楽しむコミュニケーションサービスとして、子供や孫の写真や動画を共有。コロナ禍でなかなか会うことが出来ない孫の写真や動画の共有による家族のコミュニケーション量は増加した。

 実はMIXIはこれまで、『モンスト』などで海外進出し、撤退した過去がある。しかし、『みてね』は海外でもヒット。今では世界175カ国・地域で展開、ユーザー数も2000万人を突破した。

「家族ほど粘着性の高いネットワークはない。おじいちゃん、おばあちゃんにしたら、お孫さんはどんなアイドルよりも重要な存在で、写真をプリントアウトして持っていてくれる。そういう小さいネットワークを大事にしたい。日本は年間70万人強しか子供が生まれないけど、インドでは2千数百万人生まれるわけで、今後は海外の利用者も伸ばしていきたい」(木村氏)

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