2024-03-29

中山哲也・トラスコ中山社長「誰もが思いつき、誰もが進む方向に成功の文字は無い」

中山哲也・トラスコ中山社長



知識は有限、知恵は無限



 ─ 中山さんは社長就任当時から、在庫を持つ経営を目指そうと考えていたんですか。

 中山 いや、わたしが考えたのは、業界の中では後発組ですから、どうやったら後発の会社が成長できるかということです。

 業界の常識からすると、わたしは間違いなくクレイジーなんですよ。先人たちが在庫を減らすことはいいことだ、少ない方がいいんだと言い続けてきたのに、当社はどんどん在庫を増やしてきました。これはわれわれが最後発だから、同じことをしていても勝ち目がないということです。

 だから、物流を整えないといけない、ITを導入しなければならないということで、お金をかけて東京本社内にデータセンターや物流センターを設立していったわけです。この業界でそんなにお金をかけている会社は無いんです。その結果、どんどん当社にチャンスが巡ってきた。これは自分の実力というよりラッキーだったと思います。

 ─ 常識を疑ったことで新たな成長が見えてきたと。

 中山 はい。「もっともらしく聞こえる話には気を付けろ」という教訓があるんです。

 もちろん、世間では在庫は少なければいいというデマがまかり通っていますが、これは売り手の理論なんですね。買い手の理論からすると、品揃えも在庫も多ければ、多いほどいい。お客様本位と言うのであれば、在庫はしっかり揃えるべきだと思います。

 わたしは教科書通りで上手くいくなら、世の中は成功者であふれ返っていると思うんです。しかし、現実は思いがけない発想こそが世の中に革新をもたらしていますし、現実を突き抜ける発想力をいかにして生み出していくかが今後の成長のカギになると思います。

 ─ なるほど。教科書に頼らない経営ですね。

 中山 やはり、知識は有限、知恵は無限です。だから、教科書ばかりに頼らず、独創力を鍛えて企業に革新をもたらすべきですよね。わたしは独創力こそ成長のエネルギー。誰もが思いつき、誰もが進む方向に成功の文字は無いと考えています。

 在庫を多く持っているというメリットは非常に大きいです。世の中や他社で欠品が続いたとしても、在庫があることで売上の拡大やお客様の信頼につながると思っています。

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