2024-03-20

NSGグループ・池田弘会長に直撃!「東京一極集中は危険な状況をもたらす」

池田弘・NSGグループ会長



「アドベンチャー」と言われて

 ─ 池田さんが1976年に起業したときは、そういった支援はなかったのですか。

 池田 一切ありませんでした。銀行からも「池田さんのやっていることはアドベンチャー(冒険)だ」と言われましたからね(笑)。地方銀行には全て断られ、信用組合にお願いしたのですが、宮司をやっていた父の個人保証を担保に何とかお金を借りることができました。

 当時はまだ専門学校や学習塾、進学塾などは新しい事業だったのです。新潟には進学塾も各種の学校もほとんどありませんでした。銀行へのプレゼンテーションでは、それを訴えたのですが、担当者もよく分からなかったのでしょう。

 その頃、「ベンチャー」という言葉が出始めていましたから、銀行からも「これはベンチャーではなくアドベンチャーですね」と言われて断られたのです。

 ─ 池田さんは、そのように揶揄されて、どう思ったのですか。

 池田 もうアドベンチャーでいいと(笑)。とにかく私はやりたいことをやりたかった。それで金融機関を回り、最後に信用組合に辿り着いたのです。

 ただ、その支店長も業態を理解したというよりは、父の土地や預金などで担保を取り、信組が絶対に損をしない形での融資でしたね。

 ─ 当時は何歳でしたか。

 池田 27歳です。私はお宮の息子でしたので、このときはお宮の境内地に救われました。古い舞殿という踊りを舞う建物があり、その建物を壊して最初の校舎を作ったのです。土地があったからこそできました。

 ただ、プレッシャーは大きかったですね。もし事業に失敗すればお宮の土地が取られてしまうわけですからね。土地が取られれば、お宮の後継ぎもできなくなってしまいます。父も一生懸命、節約をしながら、質素な生活を送り、お宮を残してきたわけですからね。そういう意味では、いくつかの危機はありましたが、それを乗り越える力にはなっていると思います。

 ─ 学習塾にはどのくらいの生徒が通っていたのですか。

 池田 50人ぐらいですかね。最初は近所の氏子さんのお子さんたちでした。それでも、その中から後ほど東大に合格した生徒もいました。それだけ、やる気のある優秀な子が来てくれて慕ってくれたということです。


JNBとアルビレックスの役割

 ─ 人との縁があったということですね。さて、池田さんが会長を務めている日本ニュービジネス協議会連合会(JNB)の現状を聞かせてください。

 池田 各地のニュービジネス協議会の会員数は順調に増えています。コロナ禍でも会員を増やすことができました。それだけ全国にニーズがあるということでしょう。

 47都道府県にニュービジネス協議会はありますが、その中でも東京は会員拡大に成功し、全国で4400社になりました。一方で、やはり地方都市では「今のままではダメだ」という危機意識が強いです。そこで地方の中堅企業が会員になり、ベンチャーとのニュービジネスを興そうという動きが出てきています。

 ─ 地方の中堅企業がニュービジネス協議会に入ると。

 池田 はい。各社が問題意識を持っているのです。デジタルトランスフォーメ―ションを含めたイノベーションを起こさないと生き残れません。そのためには、イノベーションを起こす人材を首都圏から戻さなければなりません。ですから、自分たちもイノベーションに取り組んでいると発信するのです。

 一方で中堅企業がベンチャーを支援すれば、ベンチャーに人的ネットワークや事業のネットワークができます。信用も与えることができるでしょう。地方の伝統的な中堅企業が入ることで、新しい取り組みができると感じているところです。

 ─ 昨年、Jリーグ「アルビレックス新潟」がJ1に復帰しました。スポーツの可能性をどう感じますか。

 池田 新潟が活性化するために、新潟をいかに若者がいてくれる街にするか。そのためには地方が魅力を持たなければなりません。その中でスポーツは絶対、若者の心に刺さる存在です。おらが町のチームがあることは、その地域住民に対してのポイントになります。皆が燃えます。

 そして、地方のチームが成功するためには、地方の中核企業などをはじめ、地域の皆さんから支援してもらう必要があります。もちろん、それは住民の皆さんも含まれます。そうした支援を少しずつ集めることができれば、熱狂が起こるのです。

 新潟県の人口は約210万人ですが、徐々に人口は減り続けています。お宮をつくる際、必ず真ん中にお社をつくり、そこに気持ちを集めます。同じように、ビジネスでも地域の心を地域の中心に集め、その地域全体を発展させていく。NSGグループは今後もそういった取り組みを続けていきます。

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