2024-03-22

日本郵政・再生への道筋は?社長・増田寛也が抱える課題

増田寛也・日本郵政社長は成長ビジョンを描けるか(写真はJR東日本との連携協定会見)




ゆうちょ銀行で8年ぶりトップ交代

 とはいえ、グループとしての連携が続く間は、頼みはゆうちょ銀行の収益。そのゆうちょ銀行では8年ぶりの社長交代が行われる。4月1日付で社長の池田憲人氏が退任し、後任には副社長の笠間貴之氏が昇格。

 笠間氏は1973年岡山県生まれ。96年早稲田大学理工学部卒業後、日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)入行。ゴールドマン・サックス証券を経て、15年にゆうちょ銀行に入社した。

 この時期、笠間氏や、同じくゴールドマンから転身した佐護勝紀氏など、運用に携わる外部出身の7人を、当時のゆうちょ銀行社長・長門正貢氏(前日本郵政社長)は「7人の侍」と称し、資産運用を改革、強化する姿勢を鮮明にしていた。

 ゆうちょ銀行は民業圧迫の観点から新規業務への進出が厳しく規制されていることもあり、やはり収益の柱は「運用」と「投資」。運用部隊を率いてきた笠間氏の社長昇格は、その方針を再度明確化したものだと言える。笠間氏は「ユニークな、オンリーワンの銀行を目指す」と語る。

 かんぽ生命も不正営業問題からようやく正常化しており、年間で1000億円前後の経常利益を安定的に稼ぐことができる存在であることは変わらない。

 問われるのは日本郵政の成長戦略。まずはゆうちょ銀行株売却で得られた1兆2000億円をどう有効活用するか。様々な提携はあるものの、収益向上に資する手を打ち切れていない。

 増田氏は不動産事業やM&A(企業の合併・買収)の強化にも言及しているが、今のところ具体策は打てていない。実現はしなかったが、17年に野村不動産ホールディングスの買収を検討したように、それなりの規模の不動産会社の買収を打つだけの資金は持っている。それによって各地に保有する土地を活用するのは1つの手。

 また、19年に米アフラック・インコーポレイテッドに約2700億円を出資。今後持ち分法適用会社となり、アフラックの利益の一部が連結決算に反映される予定。その金額は年間数百億円。

 ある市場関係者は「ネットワークの活用が重要」と指摘する。JR東日本の例もあったが、異業種との「つながり」を収益化することが必要。そして保有する資金を生かし、郵便・物流以外の事業・企業への投資による成果を複数打ち出さなければ、金融2社が離れていく中で日本郵政の将来は描けない。

 そして、全国あまねくサービスを提供するユニバーサルサービスが義務付けられている日本郵政だが、人口減少の日本で2万4000局の郵便局網を維持し続けるのかどうか。その維持コストは重い。一部報道で増田氏が将来的な整理に言及すると、政治からの強い反発が出るなど道のりは険しい。政治との調整も含め、今後も難しいカジ取りを迫られることになる。

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