2024-03-08

斉藤恭彦・信越化学工業社長「塩ビ、半導体関連に加えて、次世代ディスプレイなど新領域を開拓」

斉藤恭彦・信越化学工業社長




目の前のことを一生懸命に

 ─ 社長に就任されてから7年が経ちましたね。手応えはいかがですか。

 斉藤 パンデミックが起きた時にはどうなることかと思いましたが、事業の上では逆に追い風になるなど、巡り合わせが良かったと受け止めています。これまで取り組んできた下地、基礎がしっかりしていたということが大きいと思います。

 これは金川(千尋・前会長)の経営、リスク管理が会社の背骨になり、血肉となっていることの証左です。金川は先見性を備えた経営者でした。幸運にも、その金川の下で様々な仕事をさせてもらいました。その中で得た経験と考え方を経営する上での基本とし、取り組んでいます。

 ─ 基本を徹底してきたということですね。

 斉藤 その通りです。金川は「戦略」という言葉を好まず、一切使ったことがありませんでした。目の前のこと、今日のことを一生懸命やる。良い製品、お客様に求められる製品をつくり、適正な価格で買っていただき、つくった製品を全量販売する。これら基本の取り組みを徹底してきました。それによって今年は去年を上回り、来年は今年を上回るという実績を積み重ねてきたのです。

 ─ 海外での売上高が約8割を占める中で日本に本社を置くことの意味をどう考えますか。

 斉藤 当社の本社機能は極めて小さく、どこかに移すことに意味はありません。しかし、多くの企業が研究機能を海外にも設けるなどしており、当社も「機能の多国籍化」は進めていこうと考えています。

 ─ 現在、景気は悪化していますが、中国市場とはどう向き合っていきますか。

 斉藤 金川の時代から、中国は重要な市場であり、注意深く状況を見ながら設備投資も行ってきました。大市場であることは間違いありませんが、現在はおっしゃったようにかなり様相が変わってきています。

 当社は素材メーカーですから、取引の相手が禁輸措置の取られている国の企業でなく、公正な取引をしてくれる企業であれば良いという考え方です。

 一方、コスト競争だけでは事業は成り立ちません。中国のお客様の求めに応じて、そのご要望に合った製品を開発し、販売していくというやり方を取っていかなければならないと考えています。

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