2024-03-08

斉藤恭彦・信越化学工業社長「塩ビ、半導体関連に加えて、次世代ディスプレイなど新領域を開拓」

斉藤恭彦・信越化学工業社長




同業他社との比較を発信

 ─ 財務状態が非常に健全であるだけでなく、ROE(株主資本利益率)も高いですね。

 斉藤 はい。しかし財務が健全であることの裏返しで、現金を多く保有していると指摘されることが多いのも事実です。

 現金が多いということはROE(Return On Equity)のEの部分が大きいわけですから、一般的にはROEは上がりにくいと言われますが、お陰様で、前期で19.7%と比較的高い水準となっています。

 当社は東京証券取引所が選定する「JPXプライム150指数」の構成銘柄になっています。その150社は、PBR(株価純資産倍率)や、ROEから株主資本コストを差し引いたエクイティスプレッドが高い企業が選ばれています。PBRやエクイティスプレッドといった株主の視点が含まれた指数の構成銘柄の1社であることは、かなり強く意識をしています。

 ─ 市場との対話も含め、意識をしていると。

 斉藤 当社は化学業界に属していますが、当社と同じ事業構成の会社はありません。しかし、市場は化学業界に属する会社を当社と同じ分野で事業を行っていると見ています。

 そこで海外を含む化学業界で当社の競合ないし当社に近いとされる14社と比較してみることにしました。14社の営業利益を合算し、その値が11年を起点に当社との比較でどう推移しているかを見てみたのです。

 そうすると15年以降、当社の利益の伸びが、14社の利益の合計の伸びを大きく上回っているという結果がわかりました。この比較は最近、投資家の方々にお示ししています。

 ─ 自社の成長性を示す意味があるわけですね。

 斉藤 その通りです。やはり同業とされる企業との比較は重要だと考えました。ただ、単一の企業との比較では事業が重なっているところもありますが、全く違うところもありますから14社の合計と比較しました。

 当社は化学業界に分類されているわけですが、業界としてひとまとめで見た時には市場から「業績が伸びていない」、「成長していない」と見られることがあります。そのような見方には疑問を感じます。業界で一括りすることに意味があるのだろうかというのが正直な思いです。

 これらのことを株主の方々に向けて発信しています。同時に、個人株主の方々に当社に興味を持っていただこうと、株式分割も実施しました。当社の株式を保有していただく機関投資家、個人株主の層を広げていく必要があると考えています。

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