2024-03-13

堀江正博・東急社長「渋谷をクリエイティビティな街にするためにも、まずは我々がクリエイティブになることが大事」

堀江正博・東急社長



法人向け会員制シェアオフィスは全国に広がる

 ─ 東急ではオフィスでもコロナ以前から利便性の高いサービスを提供していましたね。

 堀江 はい。2016年から法人向け会員制シェアオフィスの「NewWork(ニューワーク)」という事業を行っていました。この事業は従業員からの新規事業提案で始めたのですが、これがようやく黒字化してきました。

 今は全国に直営店が約130店舗あります。法人の会員制なので、利用される方々の質も高く、もともと想定していたターゲット層を獲得できています。直営店に加えて提携店も含めれば全国で500くらいの拠点となります。

 とはいえ、コロナが発生したときは外出も制限されていたので稼働状況は大変でしたけどね。ただ、面白いもので、コロナ前は都心のお店が結構混んでいました。例えば営業の方がAという企業のアポイントを済ませ、次のBという企業に行くまでの間、時間調整かつ合間に仕事をする場として使っていただいていたのです。地方から出てくる方などで特にこの傾向がありました。

 とこがコロナ禍になって、原則、出社してはいけないという流れになると、今度は郊外のお店が混んできました。当初は自宅で仕事をする人が多かったのですが、オンライン会議で幼い子供の泣き声が入ってしまうといったケースもあり、NewWorkを使う方が増えたようです。

 ─ 社長就任から約8カ月、社長として社員にはどんな言葉を発信してきましたか。

 堀江 「クリエイティビティを発揮して欲しい」と言っています。やはり渋谷にはクリエイティブな人たちに集まっていただきたいと思っています。

 クリエイティブな人たちが会社の垣根や業種を越えてディスカッションすることで新しいアイデアが生まれ、イノベーションにつながり、あるいは新しい事業が生まれる。渋谷はそういう街でありたいと。

 そのためには、まずは私たちがクリエイティブでなければいけません。そのような意味も込めて、今は社員にクリエイティビティを発揮しましょうと言っています。ちなみに、私の名刺には「クリエイティブ・ディレクター」という肩書も入れているんですよ(笑)。

 ─ 人と人を「つなぐ」という機能もありますね。では、日本を代表する街として世界にも知られている渋谷のイメージをどう変えていきますか。

 堀江 変えていくといいますか、既に備わっている部分を伸ばしたい。今の長谷部健区長も「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」というキーワードを使って渋谷がダイバーシティ&インクルージョンの街であり、多様性に富んだ街であるべきとおっしゃっています。この要素はもともと渋谷にはありました。

 ですから、それをもっと伸ばしていこうと。多様性に富んで、寛容で、選択肢が多く、文化・芸術、エンターテインメントやファッションが溢れ、ナイトタイムも楽しいし、知的好奇心がくすぐられるような街にしていきたいですね。

 もちろん、観光のディスティネーション(目的地)でもあるべきです。大変ありがたいことに、2022年に都内インバウンド訪問客が訪れた街ナンバーワンに渋谷がなりました。


相鉄線との相互直通運転 新幹線などへのアクセス改善

 ─ 昨年3月には東急線が相鉄線とつながりました。鉄道でも「つなぐ」という機能が発揮されましたね。

 堀江 つながりました。日吉駅から新横浜駅を結ぶ「東急新横浜線」の開通です。これにより神奈川県の湘南台や海老名が渋谷にもつながり、埼玉県の川越などにもつながりました。これは非常に好評です。

 新設された新横浜駅によって東海道新幹線へのアクセスが良くなったというお声ですね。これまでは渋谷からだと、おそらく品川駅で乗り換えていたと思います。乗り換えのアクセスが楽になりました。

 そういう意味では、沿線の利便性は格段に向上しました。新幹線へのアクセスだけではなく、新横浜駅が最寄りの「日産スタジアム」や「横浜アリーナ」といった大規模な施設への都心からのアクセスが劇的に改善されましたからね。

 これは混雑緩和にも寄与しています。この2つの会場で同時にイベントがあると、JR横浜線はパンク状態になっていました。東横線の菊名駅で乗り換えができるのですが、それでも本当に大変な混雑状態になっていたのです。東急新横浜線の開業で新たなバイパスができました。定時性、安全性も向上します。

 ─ そういった側面でも貢献しているわけですね。

 堀江 はい。イベント需要にも輸送面でしっかりとお応えできるようになりました。必要に応じて臨時列車も出します。他にも湘南台・江ノ島エリアや運転免許場の最寄り駅である二俣川にもつながっていますので、そういったところへのアクセス改善も実現できました。

 ─ 東急大井町線では有料座席を展開していますね。

 堀江 全席指定席車両の「Qシート」ですね。大井町線では1編成に1両ですが、稼働率は高く定着してきています。

 また、東横線は8両編成の間に2両のQシートを投入し、10両編成にして運行しています。反応はまずまずで、徐々に広がっています。渋谷から横浜までと距離は短いのですが、それこそ相鉄線にも乗り入れができれば良いなと。

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