2024-02-15

NANO MRNA・秋永士朗の「創薬シーズと医療ニーズをつなぐプラットフォーマーに」

秋永士朗・NANO MRNA社長

非臨床段階でIPを製薬企業に導出する


「昨年は、カタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏(共にペンシルベニア大学の研究者)がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、メッセンジャーRNA(mRNA)医薬品が注目され、エポックメーキングな年になった。mRNA医薬は正しい標的に対し、mRNAやDDS(ドラッグデリバリーシステム)などを正しく設計すれば成功確率は高く、短期間で効率的な研究開発が可能だ」

 こう語るのは、NANO MRNA社長の秋永士朗氏。

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 新たな治療技術として注目されるmRNA医薬品。患者の細胞に働きかけ、狙ったタンパク質および、その断片をつくらせることで病気の治療につなげる医薬品だ。従来の低分子や抗体とは異なるメカニズムで作用し、狙う標的分子も多様なため、今まで治療薬が無く、開発が難しいと言われた疾患に対する創薬が期待されている。

 mRNAを使ったコロナワクチン開発では、米ファイザーやビオンテック、モデルナが短期間で実用化。日本では、第一三共や武田薬品工業、アステラス製薬などがmRNA医薬品の開発を急いでおり、2030年の市場規模が約16兆円になるという予測も出ている。

 通常、成功確率が2万~3万分の1と言われる新薬開発。創薬は、まずターゲットを決め、薬の候補となる化合物をつくり、新規物質の性状や化学構造を調べていく(基礎研究)。その後、動物実験を繰り返しながら、新規物質の有効性や安全性を研究(非臨床試験)。その段階をクリアすると、人間にとって有効で安全なものかを調べていく。フェーズ1~3まで3段階の臨床試験(治験)を経て、国の承認を得て、新薬として上市(発売)されるという流れ。

 NANO MRNAが手掛けるのは、基礎研究と非臨床試験までのプロセスで、ここで得られたIP(知的財産)を製薬企業に買ってもらい、収益を上げるというビジネスモデル。臨床開発を行わないため、創薬標的からIP導出までのサイクルを早く回すことで、創薬の開発期間の短縮を図ろうとしている。

「製薬企業は臨床試験をやって承認を得るところまでやらないといけないが、とにかく臨床はお金がかかる。抗体医薬でフェーズ1までやるだけで20億円ほどかかるので、ベンチャーはどうしても資金が回らなくなる。そのため、当社は非臨床段階で、IPを製薬企業に導出するというモデルに転換した。だから、バイオベンチャーだが、製薬企業ではないし、唯一無二のIPジェネレーター(生成元)だと考えている」(秋永氏)

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