2023-12-16

介護福祉士・石井統市「長寿世界一と出生率全国第2位の町に出会う」

68歳で出版社勤務から株式会社ゆいの介護施設にパートとして入社し、丸7年になりました。介護業界に飛び込んだ理由は、亡き父母が介護職員の手厚い介護を長年受けたことへのささやかな恩返しでした。

 さて、コロナ禍もあり、やっと4年ぶりに故郷の鹿児島に帰省し、親戚・知人を訪問の後、世界自然遺産の徳之島(周囲96キロ)まで足を延ばしました。目的は最初の父が、私が1歳のときに海難事故で亡くなったので、父方のルーツ探しでした。

 5歳のときに母の再婚により新しい父に育ててもらいました。その父が県の出先機関の責任者として徳之島に赴任したのです。当時、関東で大学生だった私は島に帰省し、数日間過ごしてみて、緑豊かで美しい海岸の景色に魅了されました。

 なぜか新婚旅行を徳之島にしてしまいました。そのとき以来、実に48年ぶりの訪問でした。結婚後、戸籍謄本より伊仙町に私の父方のルーツがあると分かっていました。妻の勧めもあり、墓があればお参りをしておこうと思い、今回訪問したのです。

 伊仙町は世界最高齢の120歳(異説もあり)で健康長寿のまま逝去された泉重千代翁(1986年逝去)の出身地として有名な町です。町役場の心温まる調査で、なんと101歳の老婦人にお会いしました。

 その方は、今もタペストリーづくりや塗り絵をされており、しっかりした口調で私のルーツの話を聞かせていただきました。また、娘さんの案内でお墓参りもできました。

 調査いただいた課長さんの名刺には「長寿世界一と子宝日本一の町(出生率は現在日本2位)・伊仙町」と表記されていました。現在、政府が少子高齢化対策を強力に進めている最中であり、その最先端の町だとの印象を深くしました。

 出版社時代から高齢化対策で懇意にご指導をいただいている辻 哲夫先生(元厚生労働事務次官・東京大学元教授)が現在、理事長をされている医療経済研究・社会保険福祉協会より「フレイル予防推進」への強い呼びかけがされています。フレイル予防の行動指針の3本柱は栄養・身体活動(運動)・社会参加だそうです。

 伊仙町からいただいた資料の取り組みからも、地元で取れたカリウム分の多い栄養価の高い食事、高齢者自身で組織・運営する地域サロン、高齢者に関わる住民活動を支援するポイント事業の展開や地域社会の強い結びつき、高齢での農業・漁業への従事など健康長寿を目指す町の気迫が伝わってきました。現に、令和4年度の100歳以上で存命の方は全国平均の約3倍以上となっています。

 介護保険施設で私が勤務する小規模多機能型居宅介護施設では、ご利用の皆様は近隣同士であり、食事や運動、毎月のイベントのための切り絵やゲームをしながら井戸端会議に興じておられます。食事がおいしい、毎日楽しいとの声もお聞きします。

 フレイル予防の行動指針の3本柱である栄養・身体活動(運動)・社会参加をメインに運営されているとも言えます。これだけの日常を高齢の個人でこなすのは、とても難しいものです。介護施設の積極的な利用のための広報活動も必要ではないでしょうか。

 このように思いを巡らせつつ、この度の訪問で、健康長寿と出生率の増加に取り組む伊仙町と同様の取り組みをしている自治体が連携し、探求心の強い高齢者世代に向けて健康長寿タウン体験ツアーを組むことも有意義ではないかと思った次第です。

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