2023-11-29

グリッド代表取締役・曽我部 完「人による計画づくりをシステムに置き換える。社会インフラの効率化を」

曽我部 完・グリッド代表取締役

もし発電所を新設した場合にはどうなるか。そういったときのデータは存在しない。過去のビッグデータが存在しないからだ。しかし、グリッドはそういったデータをつくり出すことができる。代表取締役の曽我部完氏は「社会インフラのドメイン知識を持ったエンジニアがいる」ことを強みに挙げ、電力会社や海運会社、石油会社などの日々の計画を最適化する下支えする。情報学だけでなく、機械工学や物理学出身者を数多く登用しての提案だ。新しいスタイルのAI活用法を提案する同社のインフラ最適化ビジネスとは。

三菱総合研究所理事長・小宮山宏「生成AIは私たちの生活を一変させる。しかし社会の主役は“人”」

現実に起こっていないことをデータで再現するシステム

 ─ 新しいスタイルのAI(人工知能)を活用した社会インフラの最適化システムを事業として始めようと思ったきっかけから聞かせてください。

 曽我部 もともとAIの技術開発をしていたのですが、ディープラーニング(深層学習)といった言葉に象徴されるように、当時のAIは予測や画像認識、音声チャットボットといったものがほとんどでした。人間の機能で言えば目や耳です。ただ、そういった事象を自動で認識してくれるよりも、将来どういった行動選択をしたらいいのかというところまでを教えてくれるAIがあれば、もっと喜ばれるのではないかと。

 それをもっと具体的に落とし込めば、要は自動的に計画を立ててくれるのが最も喜ばれることではないかと思ったのです。しかも、大企業にはたくさんの人材がいて、各分野に部署があり、専門家もいますが、計画づくりは人がやっていたのです。

 私たちはこの人が計画を立てて動かすところまでをシステムに置き換えることを実現しています。計画づくりは人がやっているとどうしても限界があります。それをアルゴリズム等を使うことで、最も効率的な動き方を導き出せるというわけです。

 ─ 電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティーを注力分野としていますが、なぜ電力・エネルギーなのですか。

 曽我部 インフラをどう最適化するかという社会課題に関心がありました。世の中で動いている鉄道や電力システム、工場やプラントなど、そういうのに関心のある社員が多く、インフラに関わる分野で仕事をしたいと思っていました。

 振り返ってみると、日本のインフラのオペレーションは世界的にも素晴らしい。世界に誇れるオペレーションを実行しています。これだけ停電が起こらずに安定的に電気を供給している国は日本しかありません。荷物も必ず届きますし、社会の活動を支えている日本のインフラはすごくスマートにオペレーションされているということです。そこに貢献できることは、我々にとっても大きなモチベーションになります。

 ─ その技術の強さは、どんなところにあるのですか。

 曽我部 世に言うAIにはデータが必要です。データを学習させて精度を高めていきます。しかし当社の場合は人工的にデータをつくり出すといったことをしています。シミュレーションのようなものをつくってしまうのです。ですから、基本的にはビッグデータは使いません。

 しかも、データをつくってしまうだけでなく、問題を自動で解いてしまうこともできます。この両方ができるのが強みです。どうしてもビッグデータだと偏りがあり、起きていない現象等を起こすことができません。実際のデータしかありませんからね。それを我々は人工的につくってしまうということです。

 そうすることによって様々なことが再現できます。例えば拠点を10カ所閉鎖した場合、どのようなことが起きるか、需要がこれだけ変動した場合にどんなことが起きるか。起きていない状況をつくり出せるのです。

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