2023-11-08

なぜ、7年前スタートのベビーシッター利用者支援制度は浸透しないのか?

2016年から始まったベビーシッター利用者支援事業。同制度は企業が導入を申請し、その企業の従業員が利用するというシステム。肝心の企業の利用率は0.16%と非常に低い。なぜ導入が進まないのか?


制度浸透が進まない理由

「価格が高くて簡単には頼めない。しかし外部の力を借りないと確実にやっていけない」というある30代女性経営者の声。

 女性の社会進出により様々な子育て支援が行われる中、個人の都合に合わせて時間単位で保育を依頼できるベビーシッターに関していえば、ニーズは高いものの価格などの面で課題は多く、まだまだ浸透が低い。

 ベビーシッターの利用が進まない理由の一つに、「日本ではまだ他人を自宅に入れるという心理的ハードルがある」と、全国保育サービス協会(ACSA)事務局長長崎氏は指摘する。

 だが現実問題として、ベビーシッター利用なしでは生活が回らない家庭も多い。

 そういう中でベビーシッターの利用を後押しする2016年から内閣府(現:こども家庭庁)が行う企業主導型ベビーシッター利用者支援事業。利用対象となる企業は厚生年金加入企業だが、240万社あるうち、実際の利用企業は4000社にしか過ぎない。利用率は0.16%に留まる。まだこの制度を知らない企業が予想意外に多いというのが現状だ。

「制度を利用したいが、会社が同制度を導入しておらず利用割引を受けたくても受けられない、という声が多数届いています」と語るのは、ベビーシッターと利用者のマッチングプラットフォームを運営するキッズライン担当者。企業において制度導入が進まない理由として、利用ニーズが見えにくいという問題があると指摘する。


実際にどう活用?

 利用ニーズは家庭の数だけ無限にある。例えば午後6時まで働く社員が、緊急的に2時間の残業が決まった場合。ベビーシッターに保育園までのお迎え、食事、入浴介助、寝かしつけまでを行ってもらう。残業後、これを行う心理的・身体的負担はかなり大きいが、このようなサービスがあれば働く親もより仕事に専念することができる。

 また、最も重要なのは、産後ケアとしてベビーシッターを活用することで、働く女性の精神面のケアにつながるということである。子どもへの声のかけ方から食事のあげ方まで、保育のプロの仕事を間近で見ることができ、相談しながら育児の実践知も学べることが母親の精神的な支えとして大きい。

 核家族化が進み一人で抱え込む孤独の育児に陥っている母親が多い。この問題解決に向け、政府は制度の周知徹底を進め、企業も活用推進をすべきである。少子化および人口減問題解決の突破口として社会全体でベビーシッターの活用が期待されている。

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