2023-10-26

日興リサーチセンター理事長・山口廣秀「日銀はまずYCCを撤廃すべき。次にマイナス金利の引き上げを」

山口廣秀・日興リサーチセンター理事長




日本と中国との間にある対話のパイプとして

 ─ 日本にとって「引っ越しのできない関係」である中国は今、経済的に厳しい状況ですが、関係をどう考えますか。

 山口 今、日中間が緊張した状況にあるのは間違いないと思います。日本はやはり、米国との同盟関係、民主主義諸国との関係を大事にしていくのが基本だと思います。

 ただ、日本にとって中国は一衣帯水の隣国ですから、日本の対中関係については米国とは違うニュアンスが必要だと思います。例えば半導体など経済安全保障上、機微に触れるものは厳しい対応をしていく必要がありますが、それ以外のものはむしろ取引を拡充させていくべきで、そうした柔軟性をはっきりと示す必要があります。この点、中国側にもしっかり理解してもらわなければなりません。

 ─ 山口さん自身、中国との対話には力を入れておられるそうですね。

 山口 ええ。「東京―北京フォーラム」という、今年で19回目を迎える会合に関係しています。この会合は2012年に起きた尖閣諸島問題の時にも絶えることなく続いてきました。こうした対話のチャンネルは非常に重要です。まさに「継続は力なり」です。

 今年は日中平和友好条約締結45周年です。10月に北京で開催する会合は成功させたいですし、事務方同士の打ち合わせでは中国も同じ思いです。

 このフォーラムは、日本側の最高顧問が福田康夫元総理、実行委員長が武藤敏郎・元財務事務次官です。中国側は、国際伝播集団総裁、国務院新聞弁公室主任がトップで、ともに大臣級です。

 習近平主席は、この会合で日本側がどのような主張をしてきたかに強い関心を有していると聞いていますから、我々も日本の考え方を、相手方にとって多少耳障りなことであっても、きちんと伝えていくことが大事だと思っています。

 ─ 自由主義と覇権主義という価値観の違いはどう乗り越えようと?

 山口 大変だと思います。しかし中国は世界第2の経済大国となり、民主主義国家との付き合いなしには経済が維持できない状況にあります。そのことは中国自身がよくわかっていると思いますし、我々も中国の存在なしには自分達の経済を維持できないこともまた事実です。相互依存の関係にあることを認識し合いながら、信頼関係を結んでいくことが重要です。

 ─ 中国は改革開放以来、初めてバブル崩壊に遭遇しているわけですが。

 山口 バブルは回避するのが難しい性質のものです。中国では、企業にしろ消費者にしろ、借り入れの残高が非常に大きくなっています。特に地方政府の債務規模が大きい。この借り入れが減ってこないことには、実はバブルは終息しません。今、中国は苦しい状況にあり、これが世界経済に影を落とす可能性が高まっていると思います。また、中国に日本としてアドバイスできることがあれば、それを惜しむべきではありません。

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