2023-09-10

【待機児童ゼロ、高校生までの医療費助成を実現】東京都武蔵野市長・松下玲子に直撃!

松下玲子・東京都武蔵野市長



医療費助成のメリット

 ─ 人口減少の中で、どう社会を支えていくかですね。

 松下 その通りです。一見、子ども・子育て支援とは、子どもを育てる人への支援のように聞こえます。ですから、所得制限などの議論が出てくるのでしょうけれども、それは違います。高齢の方も独身の方も皆で支えないと、労働力人口が確実に減っていく中で社会を成り立たせることができなくなってしまうのです。

 消費者がいなくなれば企業にとってもマイナスです。ですからコロナ禍でも「子育て支援ではなくコロナ対策だけをすればいい」と言われたりもしましたが、私はコロナ禍でも子ども・子育ては大事で、高校生までの医療費無償化を実現しますと宣言し、コツコツここまでやってきました。子どもは未来の大人であり、未来の宝です。

 ─ 人と人との結びつきが薄くなる中で、武蔵野市は人のつながりやぬくもりを大事にしていくということですね。

 松下 はい。市民皆で支え合い、高校生までの医療費助成も東京都よりも先駆けて始めました。いろいろな意見がありましたが、医療費助成の意義を丁寧に粘り強く説明し、理解を求めました。

 子どもの間の医療費を社会全体で支えようという制度です。今は子どもを育てている親が負担している部分を皆で負担しよう。子どもが18歳になり、支援は終わり、そして、その子どもも今度は大人になるので、次は支える側になりましょうと。

 さらに私がこだわったのは所得制限や一部自己負担をなくした点です。病気やけがのリスクは本人の努力とは無関係です。どんなに健康に気を付けているアスリートだって、病気になったりします。本人の不摂生などではなく、努力とは無関係でけがや病気をするので、そのときには治療に専念するために、金銭的な部分は心配いらないよと。

 ─ 社会保障が何のためにあり、どんな考え方で運営されているのかを知るべきだと。

 松下 日本の社会保障制度は貯蓄型ではなく仕送り型です。いま年金を受給している方々は、かつて自分が払っていた年金を受け取っているわけではありません。今の現役世代が負担している年金をそのまま受け取っているだけなのです。まさに仕送り型なのです。

 そして、その仕送りをしている人たちがいなくなれば、今の日本の社会保障制度は破綻してしまうのは当然です。だからこそ、国も焦って「異次元の少子化対策」と言い出した。もっと思い切ってやろうというメッセージだと受け取っています。  ─ もう1つの待機児童ゼロはどう実現したのですか。

 松下 この議論も大変でした。総論賛成各論反対の方もいます。仕事と子育ての両立、または介護と子育ての両立という観点からも大事だけれども、うちの隣にはつくらないでねと。前市長の時代に市有地に保育園をつくろうとしたら反対の声が上がり頓挫しました。

 しかし私は絶対につくると。結果的に良い保育園ができました。市内でも高級住宅街とも言われている地域の市有地につくったのですが、保育園ができると地価が下がると近隣の方々から最後まで反対の声が上がっていましたが、とにかく交渉しながら理解を求め、最後は私の決断で実行しました。


インフラ再整備にも注力

 ─ その実行力で2期目はどんな政策を進めますか。

 松下 1期目と同じ子ども・子育て支援は継続していきます。加えて、老朽化した公共施設やインフラの再整備の二本立てで政策を実行していきます。武蔵野市は昨年、市制施行75周年を迎えました。早い段階で上下水道を整備して学校などを造り、まちづくりを進めてきたので、様々な施設が耐用年数の60年を迎える節目に当たっています。

 ですから、計画的な建て替えが必要ですし、維持管理も重要です。公共施設はしっかりと維持管理しないと、市民の生命が脅かされます。日頃のメンテナンスと適切な維持管理が非常に大切なのです。これは見えにくいのですが、決して手を緩める部分ではありません。

 特に道路や地下に埋設されている下水道管、水道管は、企業の力もお借りしながら進めていきます。ただ、人件費や資材費が非常に高騰しており、発注しても落札されないという難しさを痛感しています。公共事業なので法外な金額を提示することはできませんが、計画的な改修や維持管理を着実に進めていこうと思います。

 ─ 武蔵野市の人口の増減はどんな状況なのですか。

 松下 実は武蔵野市の人口は増えているのです。約15万人で微増を続けています。武蔵野市は土地の利用も見直していません。高層マンションがどんどんできるわけではないのですが、生活しやすいということで人口が増え続けているのです。

 私が就任してから6年間、子どもの数も1000人以上増えました。ですから、市としては人口増に対応した取り組みをし、市民サービスが低下しないようにしていかなければならないと思っています。

 ─ 武蔵野市は若者を中心に人気のある吉祥寺などを抱えています。その魅力とは。

 松下 1つは商業地域と住宅街が近接したコンパクトなまちと都心へのアクセスの良さです。市内にはJR中央線の駅が吉祥寺、三鷹、武蔵境と3駅ありますし、吉祥寺には井の頭線と京王線も走っています。三鷹駅はJR総武線の始発駅でもあり、東京メトロの東西線も走っています。

 そしてもう1つが緑です。これは意識しています。緑は市民の共有財産という認識の下、緑を大切にする街路樹や公園の整備、さらには武蔵野市には農地もあり、生産者の皆さまのお力を借りながら都市農地も保全しているところです。

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